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銀新/気まずい二人乗り/銀魂

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 昼と同じように白い湯飲み茶碗に、濃い煎茶を淹れてくれた。昼も思ったが、香りもいいし微かな甘みがある。とてもいい茶葉に違いない。お茶菓子にだされた最中にもたっぷり餡がつまっていた。
「初めに見たときも思いましたけど、立派な庭ですね。江戸でこんなすごい枯山水を見れるなんて思ってもいませんでしたよ」
 新八がにっこりいうと、おさとは顔を赤くさせたままふるふると首を振った。
「きょっ、京のっ、有名な庭師さんに造園してもらったんです」
 うつむいたままおさとが言う。
 銀時はずずずっとお茶をすする。行儀の悪さを新八が目で叱ると、銀時はすぐに目をそらした。
「う…うちのお父さん、大仰なのが好きだからこりにこってしまって……。でっ、でも、そのおかげでこの庭を見にお客様が何度も足を運んでくれるんです……っ」
「へぇ。それを俺らはただで見れたってことか。ラッキーだな」
「こっ、この部屋っ。弦月の間っていうんですけど、この部屋にはジンクスみたいなものがあって……好き合った二人がこの部屋から、夜の庭を見て差しつ差されつやってると新月でも白砂に満月が映るって……。それを見れた二人は幸せになるってお客様の間で噂になってるんです」
 自分でもその噂を気に入っているのだろう。おさとは嬉しそうに話した。
 へえ、と感心しながら、新八と銀時は波の線が引かれた白砂を眺めた。
 ロマンチックですね、と新八がおさとの方に振り返ると、おさとの真剣な眼差しと目が合う。思わずドキリとして、おさとが赤面してうつむくのを見つめた。
「あ…の……僕に何か?」
 ごくりと唾を飲み込んで、新八は問うた。
「あああっ、すみっ、すみません。不躾に見つめたりしてっ」
 おさとは下を向いたまま、頭の上で手をひらひらさせる。
「……じっ、実はっ、わたっ、私の好きなキャラに似ててっ……っ」
 銀時がぶっとふきだした。
「……きゃら?」
「え、えっと、お名前、お名前なんでしたっけ……? ああ、志村さん。志村さん……少年ヂャンプにのってるとあるキャラクターにそっくりで……。今日ずっと見てたりしてのはそのせいなんです。ホント、ごめんなさいっ」
 唖然としている新八の横で、銀時が笑いをこらえてプルプルと震えている。
 新八は冷静を取り戻すためにお茶をずずっとすすると、無理やり笑顔を作った。
「あはは、そうなんですか、あはは。光栄だなぁ……!」
 銀時は未だに震えている。新八は苛立つ心を抑える。
「話を戻しちゃいますけど、そんな噂がたつなんて素敵ですね」
 どうにもいたたまれなくて、話を無理やり変えることにする。
 真っ赤な顔を更に赤くしたおさとが恐る恐る顔を上げた。
「ああ……ええ。深川あたりにはいろいろ変な言い伝えみたいなものがあるんですよ。に、西のほうにもっ、い、井の頭公園でボートにのったカップルは別れるとかあるじゃないですか。それと同じで……」
 新八は茶をすする。隣の銀時をみると、もう笑ってはおらず、すっきりした顔で最中を食べながら庭を眺めていた。
「ここから少し東にいったころに八幡様があるんですけど、そこで求婚したらうまくいくとか、図書館で一緒に勉強したカップルは別れるとか、集英橋の広場で夕日を見たら別れるとか」
「集英橋ってあの大川の?」
「ええ。あ、あそこ、す、すごく夕日が綺麗に見えるのに、そんな噂があるから……だ、誰も、降りないでまっすぐ橋渡っちゃうんです」
「あはは。まあ、彼女もいない僕たちには関係ないですけどねっ」
 新八はやけくそになって笑った
「じゃー、そろそろ失礼するか」
 銀時は残りの茶をすすると、ゆっくり立ち上がる。新八も半分残っていた茶を飲み干して立ち上がった。
「あのっ、ち、父に良く言っておきますからっ。またっ、また来てくださいねっ」
 おさとは二人を見送りながらそういった。
 そんなおさとに頭を下げて、裏口の戸から二人は外に出る。
「ちょっと、銀さん。大恥かいたじゃないですかっ」
「何言ってんだよ。俺のせいじゃねーだろ。いっ、いくらなんでも漫画のキャ、キャラに……っ」
 言いながら銀時は笑い出す。それに困った顔をするが、新八もだんだんおかしくなって一緒に笑ってしまった。
「お前にはもっといい奴が近くにいるって」
「え? またまたー。そんなこと言って、また期待させないで下さいよ」
「俺だよ、俺。俺、お前のこと好きだもん」
「あはは、照れるじゃないですか」
 まだ笑いが残った声で銀時が言うので新八も笑う。人から好きだといわれるのは、銀時からでもくすぐったかった。