デジキャラット・シンフォニー 2
「今朝方、石橋都知事が亡くなられた・・・」
「な、何だと?」
「石橋都知事が今朝亡くなられたことで近いうち都知事選挙がある」
「まさか、その選挙に出馬しろと言うのではないだろうな」
「そのまさかだ、党としては早めに地盤を固めておく必要がある。そのため石橋都知事の腹心だった平田に白羽の矢が立ったのだ」
「いきなり急に・・・」
「すでに反石橋派は原口都議を擁立する動きを見せている」
「原口・・・あんな男が都知事になったら東京はおしまいだ。父上の暗殺未遂に加担した首謀者・・・」
「原口の暴走を止められるのは平田道明先生の息子であるおまえしかいない」
こう言われて久弥の頭は大車輪で動き出した。
原口恒雄、かつて平田道明の学説に反対し、対中国謝罪を主張した東京都議である。彼の学説はそれこそ過激で「平田道明消すべし」と平田道明暗殺計画を実行し、未遂に終わったが、彼はそれでも計画が失敗したのは平田のせいだと主張して譲らなかった。
原口にとって邪魔なのは平田一族とその学説を支持する石橋都知事であった。
その石橋都知事が死んだ今、原口が立ち上がって平田一派を追放するにはまたとない機会に恵まれたことになる。
「その暴走を防ぐことができるのは平田久弥、あなただけだ」
ここで出馬を辞退すれば自分は再び政界に返り咲くことはない。
「久弥さん、チャンスがやってきたにょ!そんな乱暴なやつは倒して政治家になるにょ!」
でじこたちとの毎日も楽しかったが、やっぱり政治家に返り咲くべきか・・・
「久弥さん、これを見るにょ」
それは平田道明がでじこに与えた本であった。
「平田先生は自分ならできると信じるものが最後に笑うといつも言っていたにょ」
だがさすがに平田道明の息子である。そう簡単にうんとは言わなかった。
でじこは何とかして久弥にうんと言わせたかった。
「久弥さん、「陽明学」を忘れたのかにょ!『世の中のために良いと思うことは自分で実行して世のため人のために役立てる』、自分で実行するにょ!」
「久弥さん、あたしからもお願いします。大塩平八郎は苦しむ人たちのために自ら立ち上がって反乱を起こしました。久弥さんもやってください!」
「久弥さん、やるにゅ」
「陽明学の教えか・・・」
「三島由紀夫以来陽明学で世の中を変えようと言う人はいなかった。平田久弥、おまえがやれ!」
「しかし・・・」
作品名:デジキャラット・シンフォニー 2 作家名:細川智仁