デジキャラット・シンフォニー 2
「そう言えば、久弥さんはかつては世界中のラジオを相手にした名リスナーだったんですよね」
「時代がこれほどまでに変わるとは思わなかった・・・」
でじこたちがその話をもっと聞きたいというので久弥はもう今日は予定がないからと事務所に戻ってからでじこたちにゆっくりと話し出した。
・・・私がラジオの世界に入ってからもう20年になるか。あの頃は今とはだいぶ世の中が違っていた。いつ外国から日本が攻められるか、そんな時代だった。私が高校の頃だったか、主に海外の放送局を相手に世界中のラジオ局を聞きまくったものだ。おかげで少々共産主義にかぶれていてな、いずれはソ連が世界を支配すると本気で考えていたものだ。父上にはその危なさが分かっていたのか苦い顔されたが、今の若者よりよっぽどましだったよ。20年もこの世界にいればちょっとは世の中変わるだろうが、ここまで劇的に変わるとは思わなかったよ。フィリピン革命、昭和天皇崩御、ペレストロイカ、湾岸戦争、ベルリンの壁崩壊、ドイツ統一、ソ連崩壊、55年体制の終焉、阪神大震災、ペルー大使公邸占拠事件、南北首脳会談、日朝首脳会談、イラク侵攻、バチカンのコンクラーベまで生の世界史を実体験で学んできたんだ。おかげで社会科はいつも一番だったよ。ドイツ統一とソ連崩壊が一番思い出深かったな。
外国のラジオの中には10数局ほど日本語で放送している局もあるが、私は英語放送で世界中相手に引っ掻き回して暴れたものだ。国内とは事情が大きく異なるのが海外ラジオで、周波数は一年に何回も変わるし、放送時間も一定していないことが多い。何せ日本政府の許可が要らないから放送局の都合次第で周波数も番組も時間も頻繁に変わる。放送局がつぶれてなくなったり、台風や地震で壊れたりすることも頻繁だった。放送局でストライキが起こって何日も電波が出なかったり、放送局が合併したり買収されて経営陣が変わるならまだいいほうで、クーデターが起こって一夜で放送局の人間が総入れ替えということもあった。地震や噴火でも起これば一夜で世の中が変わることも何度もあった。しかも真夜中に起きて英語放送を聞くことが多かったからヘッドホンをつけたまま寝たことすらあった。時差があったからね。
作品名:デジキャラット・シンフォニー 2 作家名:細川智仁