デジキャラット・シンフォニー 2
久弥は奥から大きいお皿を取り出すと、順に刺身を盛り付けるよう指示した。
久弥はさらに小皿と塗り箸をありったけ取り出した。
「魚は大皿に盛ってみんなで食べよう。一人ずつ小皿と箸を取って食べるがよい」
準備ができたところで、ミルフィーユ秘書が飛び込んできた。
「久弥さん、大変です」
「ん、なんだ?」
見ると、マスコミが大勢来ていた。
「当選おめでとうございます」
「当選?」
時計は10時半を回っていた。
「これが最新の開票速報です」
見ると、久弥は自分自身でも驚いた。開票率30%で
平田久弥 54万7300票、原口恒雄 17万8000票、平田久弥当選確実!
この時間になると久弥の地盤の大都市の票が続々と開き、久弥の票が次々と上積みされていくのに対し、原口の票はこれ以上の増加の兆しは見えなかった。
「久弥さん、勝ったにょ!」
「そうだな、そろそろ勝利宣言してもいいだろう」
その場の全員が万歳三唱をした。
翌日の新聞に掲載された最終結果は
平田久弥 192万9843票
原口恒雄 32万1680票
で、久弥の圧倒的勝利であった。
久弥の事務所では夜通し宴会が続いていた。
「はて、今夜は少し騒がしいようだが・・・」
そこへでじこが飛び込んできた。
「久弥さん、大変にょ」
「どうした?」
「みんなが外で歌を歌っているにょ!」
久弥が窓を開けてみると確かに外から歌が聞こえてきた。
「こ、これは・・・」
久弥はしばらく動きを失った。
「ワルティング・マチルダだ」
「何なのかにょ?」
「ワルティング・マチルダ。別名「南十字星ワルツ」。はるか南の国々で南十字星が輝くときにこの歌が流れると言う・・・」
「南十字星と言えば上本町にょ」
「父上の予言がいよいよ現実になったか・・・」
「平田先生が何か残したのかにょ?」
「うむ、父上は生前こういい残した。『もし、この国の歴史が変わるとすれば、最初の火の手は大阪上本町から神戸三宮の間のいずれかの町から上がる。そして東京で最初の火の手は必ず町田から上がる。その火は消えることなく東京全部を焼き尽くし、東西の火は名古屋で一つとなったとき、古い時代は終わり新しい時代が始まる』」
「まるで今の世の中を見ているようだにょ」
「父上は歴史学者だった。歴史は不思議な学問でな、ある程度研究すると未来と言うものが見えるらしい」
作品名:デジキャラット・シンフォニー 2 作家名:細川智仁