デジキャラット・シンフォニー 2
「本物のミルフィーユさんは料理上手にゅ」
「普段はごはん係は私がやるんだ」
「主人に料理をさせる秘書なんて常識はずれにょ」
久弥は買ってきた豆腐を差し出した。
「私が作るから、それまでの間は納豆豆腐を食べていろ」
久弥は豆腐に引き割り納豆をかけたものを出した。
「豆腐にくぼみがあるにゅ」
「高級な店では良くある手口だ」
久弥は手際よく中華なべを操作した。
「さすがは平田先生の息子さんだにょ」
「期待できるにゅ」
但し、久弥が作っていたのは中華料理ではなかった。中華なべを使って乾麺をゆでていたのである。
久弥は中華なべでゆでた麺を水で冷やして締め、お湯を張ったたるに入れた。
これをつけつゆにつけて食べるのである。
さらに別の鍋に野菜と鶏肉を入れ、その上に砂糖を山盛りにし、しょうゆをかけて火にかけていた。
「おいしいにょ!何といううどんですかにょ?」
「違う、これは名古屋のきしめんというものだ」
「ええ?名古屋名物の?」
「これは名古屋から持ち込んだ本物だよ」
「すき焼きもおいしいぴょ」
「これはすき焼きではない、「ひきずり」という名古屋料理だ」
「そう言えばこれは鶏肉にょ」
「辛くておいしいにゅ」
「ミルフィーユは女の子のくせして料理がへたくそだからね」
「そうだったのかにょ」
その夜、原口がとんでもないことを言い出した。
「不正な選挙により平田久弥が当選した選挙結果を私は到底認めることはできない。従って我々はここに都議会から独立して人民議会を結成します」
原口は自分の腹心だけを集めて都議会から独立して新たに人民議会を結成した。
しかし、原口に同調したのは都議会の定数127名のうち、わずかに3名だけだった。出身地である清瀬市からは原口だけしか議員がいないこともあり、隣の東久留米市は平田支持だった事から原口は地元からすら見捨てられたのである。
7.久弥の死
久弥は都知事になってから良く働いた。都庁をあけることも多く、その分だけ都民の暮らしを見たいと精力的に都内を見てまわった。
久弥は選挙後もヒマさえあればでじこを呼びつけては視察に同行させた。
「でじこちゃん、よく見ておけ。民の暮らしを知らずして、上に立つことはできない。
政治家はあくまで市民の代表であり、一市民なのだ」
作品名:デジキャラット・シンフォニー 2 作家名:細川智仁