デジキャラット・シンフォニー 3
電話の相手は久弥の親友でぴよこの上司である杉本正弘・宮内庁侍従長だった。
電話を切ったぴよこは言った。
「これからぴよこは名古屋駅へいくぴょ」
「杉本さんのお呼び出しですか?」
「違うぴょ!王様からのお呼び出しぴょ!」
「ぴよこがお仕えしている気安くて庶民の生活が大好きな王様ですかにょ?」
「でじこさんも見習ったらどうですか?」
その場にいた一同は笑った。
王様はぴよこを侍従として大変かわいがっていた。特にぴよこの作る黒豆の煮付けは王様のお気に入りのメニューだった。ぴよこが休みを取って名古屋に観劇に来たのが王様にはさびしかったようで、杉本侍従長を伴って名古屋にやってきたのだった。
でじこたちは名古屋駅で王様を出迎えた。
王様はそばにいた市民一人一人に声をかけていた。
やがて、ぴよこを見つけるとそばへ寄った。
「花散里(ぴよこ)。お出迎えご苦労様です」
「ぴょ」
王様は親しい人間には本名を使わず「号」で呼んでいた。でじこたちにも生前久弥さんが用意してくれた「号」があったのである。
「相変わらず気安い王様だにょ」
「おお、これは・・・澪標(でじこ)、胡蝶(ぷちこ)、蜻蛉(うさだ)、橋姫(ミルフィーユ)・・・
久しいのう・・・」
「王様、そんなことでは庶民になめられるにょ」
「これ、でじこちゃん・・・」
「よしなさい、夢浮橋(杉本侍従長)。澪標(でじこ)、よく聞きなさい。王様とは庶民あっての王様なのですよ。庶民の力がなければ、王様の地位もないのです」
「でじこおねえちゃんは王様の本当の偉さを知らないんだぴょ!」
中日劇場では王様のために貴賓席を用意していたが、王様はあくまででじこたちと同じアリーナ席で見たいと譲らなかった。
開演前、王様がアリーナ席へ向かうと一斉に歓声が上がった。
「まるで客席に主役がいるにょ」
幕が開くと『サクラ大戦 V』の公演が始まった。
ここでも美香が現れると客席は歓声に包まれた。
「キャー、ジェミニー!」
「いつ見ても、美香さんのジェミニはかっこいいにょ」
「当たり役にゅ」
ぴよこは王様の隣に座ったが、王様がいることすら忘れて盛り上がっていた。
一番の盛り上がりはうさだだった。最後には杉本侍従長までが参加した。
ただ、王様と真紅だけは静かに公演を鑑賞していた。
公演が終わって、でじこたちは王様と食事会をすることが許された。
作品名:デジキャラット・シンフォニー 3 作家名:細川智仁