デジキャラット・シンフォニー 3
この箱を開けられたということはでじこちゃんのテストは合格だ。
もうこれ以上墓を掘り返す必要はない、土だけ元通り埋め戻して、この手紙は箱ごと杉本を経由して王様に差し出しなさい。
でじこちゃんが政治家になって陽明学の世の中を作り、日本を救うことを心から期待しています。
平田久弥 」
そして箱の中にはもう一通、王様宛で
「推薦状、私はショコラ・デジキャラットに政治家の素質が十分備わっていることを認め、ここに政治家として推薦します。平田久弥」
気がつくと、もう夕暮れになっていた。
「久弥さんも見るかにょ?1000万ドルの神戸の夜景にょ・・・」
でじこたちは穴を元通り埋め戻した後、箱をふもとで待つ杉本侍従長の元へ持っていった。
「久弥さんの推薦状か・・・あいつもずいぶん粋なものを残してくれたが・・・王様宛である以上は奏上しないわけにはいかないだろう」
奏上とは、臣下が王に対して文書などを提出することである。その儀式は宮殿内で大掛かりに行われた。
でじこは儀式には参加せず、まず杉本侍従長がでじこから久弥さんの推薦状を受け取ったことを王様に報告すると、王様は別室で控えていたぴよこを呼んで手紙を持ってこさせ、それを杉本侍従長が受け取り最後に王様が読むのである。これででじこは久弥さんから王様へ政治家として推薦された。
9.有楽町の歌姫
でじこたちは東京へ帰った。
その夜からアキハバラや新橋、有楽町などに不思議な歌声が聞こえてきたと言う。
聞いて心がなごむような歌だったと言う。
だが、でじこたちにはその正体は分かっていた。これは真紅が東京都心部を回り、平田先生の歌「ワルティング・マチルダ」を歌っていたのである。
「真紅、今度は何を考えているにょ?」
「別に何も考えていませんわ。ただマスターが懐かしくなって・・・」
「気持ちは分かるにゅ」
「お前それしか歌えないのかにょ?」
「別の歌もありますわ」
そういうと、真紅は別の歌を歌いだした。
「いかがですか?これは「ファット・ア・フール・ビリーブス(マット・ビアンコ)」と言いまして、久弥さんのテーマソングでしたの」
「なんか体の底から力がわいてくるような曲だにょ」
作品名:デジキャラット・シンフォニー 3 作家名:細川智仁