デジキャラット・シンフォニー 3
そうして1ヶ月が過ぎた。このころになると真紅たちのバンドのギャラリーは増え続けておさまりきらなくなり、ゲーマーズでは平田先生の祭壇の近くにあった商品棚をみんな撤去して真紅たちのステージに変えた。それでも人があふれた。
有楽町でも大黒様の前では歌えなくなり、真紅たちは駅前広場に平田先生と久弥の写真を置いて歌っていた。
その日の演目は久弥さんのお気に入りで美香さんの持ち歌でもあった「おおシャンゼリゼ」だった。真紅のボーカルもさることながら、翠星石のトランペット、蒼星石のアコーディオンも評判を集め、アキハバラの街中で彼女たちのメロディーが響いた。
「あいつら、アキハバラを宝塚にする気かにょ?」
「オタクと同人誌にフレンチシャンソンは合わないにゅ」
うさだだけは大喜びだった。
「ビバ!宝塚!毎日スターたちに会えるなんて素敵じゃない!」
「うさだ、お前これが異常ってことに気付かないのかにょ?」
「まるでセーヌ川で錦鯉が泳ぐようなものだな」
「素敵じゃありませんか!それでこそ「モン・パリ 我がパリよ!」の世界です!」
「ズカファンのうさださんに相談するだけ無駄だったにょ」
「エッフェル塔をアキハバラに作る気かにゅ」
この1ヶ月で汗臭いオタクたちはすっかりアキハバラから消えて代わりにおしゃれな女性たちの集う町になった。そして町もすっかり変わってしまい、ゲーマーズでも雑誌「歌劇」を置いたり越路吹雪さんのCDが流される有様だった。店の客もすっかり変わってしまい、美香の店ということで宝塚の劇団員たちが東京公演の折にやってきた。
アキハバラに集う乙女たちは口々に歌を口ずさみ、うさだまでが「おおシャンゼリゼ」や「すみれの花咲く頃」などを歌う有様だった。
それと同時にゲーマーズはアニメよりも「国境のない地図」「風と共に去りぬ」「ガイズ&ドールズ」「哀しみのコルドバ」「ミー・アンド・マイガール」などを取り揃え、さながらアキハバラのキャトルレーヴ(宝塚ショップ)の様相を呈していた。
店はズカファンのうさだの言うがままになっていた。うさだのおしゃれは日を追うごとに派手になり、時にはタキシードを着てくる有様だった。調子に乗ったうさだは「愛の賛歌」や「サントワマミー」などを歌いながら仕事をしていた。
作品名:デジキャラット・シンフォニー 3 作家名:細川智仁