デジキャラット・シンフォニー 3
そして、このトンネルを一番列車が通過した時には、久弥さんが世を去った後だった。
上本町に移された銅像の台座にはこう記してあった。
「おい、みんな、ここが約束した上本町だぞ」
今は平田先生も久弥さんも三宮に近い六甲山で眠っているのだが・・・。
「このトンネルがある限り、いつでも平田先生に会いにいけるにょ」
「それだけじゃないわ」
「ほかになにかあるのかにょ?」
「三宮の先の高速神戸駅、または阪急三宮駅で乗り換えるだけで宝塚まで行けるのよ」
「にょにょ〜。美香さんの舞台も見に行くことができるのかにょ〜」
2、宝塚歌劇とラプソドス団
式典のあと、でじこは宝塚で美香の舞台を鑑賞した。
演目は「ウエストサイド物語」宝塚のポピュラーな演目である。
「かっこいいにょ〜」
速いテンポの踊りと歌にでじこたちも圧倒された。
公演のあと、でじこたちは楽屋を訪ねた。
「美香さん、すごかったにょ」
「さすがは宝塚のトップスター」
「ありがと、でじこちゃん」
美香はため息をついた。
「あかりもみてくれているかしら・・・」
美香は自分の親友で、でじこの先生だったうさだあかりを思い出したようである。
「平田一族は本当にすごい人たちばかりだにょ」
「でも芸ができるのは美香さんだけにゅ」
「そうかしら?」
美香はそういうと窓から外を指差した。
でじこが窓の外を見ると、なにやら人だかりができている。その中心には紙芝居とアコーディオンを持った少年がいた。
「ラプソドス団よ」
「ラプソドス団?」
「久弥さんが生前、大道芸人を集めて結成した劇団よ」
久弥は父、道明の業績を永く残せる方法はないかと考えた結果、自分で台本を作りそれを大道芸人たちに演じさせることにした。そこで「ラプソドス団」を作り、日本中で人々に道明の話を語って聞かせて多くの人に「伝説」を語り継いでもらうことにしたのだ。
久弥の死後は「ラプソドス団」の人々は世界中で久弥の業績を語り始めたのだ。
「光が差すのは夜明け前、四方から高田馬場に集まった戦士たちは、ラジオに耳を傾けて、ワライカワセミの声を待つ、メルボルンから流れる泣き声に、空の神は太陽を起こし、明るい世の中作れと、でじこちゃんたちに告げるのだ、町に流れる歌声は、新しい世の始まりと、皆が歌うよワルティング・マチルダ、やがて集いし池袋、ここで会ったが百年目、原田に天誅一発下す・・・」
作品名:デジキャラット・シンフォニー 3 作家名:細川智仁