デジキャラット・シンフォニー 3
そうしないと天国から三宮の場所が分からなくなる」と豪語していたが、二人がこの世からいなくなっても三宮駅は建て直す気配すら見えない。むしろうるさい人たちがいなくなってほっとしていると駅員から聞かされた真紅たちは激怒した。
真紅たちが怒ったのはそれだけではなかった。乗りごごちが大変いいと聞かされていた阪急電車では雛苺や翠星石が転倒し、楽しみにしていた阪急梅田駅のミルクもなく、久弥の好物だった阪急百貨店の大食堂のカレーを楽しみにしていたのだが、梅田の阪急百貨店は建物自体が取り壊されていた。平田先生が「百貨店の模範」としていた梅田阪急が跡形もなくなっていたのだ。
さらにライブ会場に予定していたかまぼこ屋根の阪急梅田駅旧コンコースは取り壊しの真っ最中だった。真紅と平田先生や久弥との思い出が全部破壊されているのである。
「これが・・・時代の流れね・・・」
「平田先生が愛した町が・・・壊されていく・・・」
真紅たちのライブを楽しみにしていた美香さんも泣き崩れた。美香にとってはこのコンコースが青春の舞台だったからだ。
さらに梅田からバスに乗って真紅たちが向かった上本町光の広場では隣の近鉄劇場が取り壊しの真っ最中でライブが出来ない有様だった。近鉄側は代わりに駅の北側のスペイン広場をライブ会場として用意してくれたが、真紅たちは納得せず結局光の広場で「ワルティング・マチルダ」と「おおシャンゼリゼ」の2曲だけを歌ってその後にスペイン広場でのライブを行った。
名古屋に移動するアーバンライナーの中では真紅は一言も口を聞かなかった。
「真紅〜」
「ほっといてあげなよ。真紅にとってはマスターとの思い出が全部ぶっ壊れたようなものだからな・・・」
上本町で星を見ることのなかった真紅たちが「同人誌スカイラウンジ」で見た地上の星、これに感動しないはずはなかった。神戸や大阪では平田先生との思い出の場所が次々と壊されていたが、名古屋では久弥の話通りの場所がそのまま残っていたからだ。だが、真紅たちは名古屋でも次々工事が行われていることを知った。
「このままではマスターと久弥さんが語った場所が全て壊されてしまう・・・。名古屋を大阪のようにしてはならない・・・。なぜならマスターも久弥さんもいない世の中では私が久弥さんに代わって歴史を語り継ぐしかないのだから・・・。」
「そうだったのかにょ・・・」
作品名:デジキャラット・シンフォニー 3 作家名:細川智仁