デジキャラット・シンフォニー 3
「確かに東京でも同じことが進んでいる。簡単に古いものを取り壊してしまうからな。伯父上が有楽町を気に入っていたのは、有楽町は伯父上の子供のころから新しい建物が建つことなく変わっていない町だからなんだ。山手線で昔から変わっていない駅は今や有楽町だけになってしまったからね・・・。伯父上も言っていた。古くなって使えなくなったからと言って壊したり捨てたりすることだけが果たして良い事なのだろうかと」
「その通りだわ」
その言葉と共に美香が大臣室へ入ってきた。
「ジェミニ・・・いえ、美香さん・・・。」
美香は宝塚のスターたちを引き連れて大臣室へ入った。
「美香さん、東京へ帰るのは来年じゃなかったのかにょ?」
「それどころじゃなくなったの!」
美香はでじこの前に進み出た。
「でじこちゃん、単刀直入に言うわ、麻生さんにお願いして宝塚歌劇団を国で買い上げてちょうだい!」
「ええーっ」
宝塚歌劇団は長い歴史を誇るが、近年は相次ぐ施設の老朽化や天災による施設の立替とそれに伴う借入金の圧迫に加え、観客の減少に歯止めがかからなかった。阪急電鉄という親会社はあるものの、親会社が経営不振のため宝塚歌劇団は経営危機に陥っていて国の支援がなければどうにもならなくなっていたのだと言う。劇団がなくなれば美香さんをはじめ数百人のスターたちが失業するのだ。これでは公演どころではない。そこで宝塚歌劇団では美香を中心にしてでじこに最後の頼みをしに来たのだと言う。
「美香さんだけは助けたいにょ・・・」
「いいえ、みんなを助けてちょうだい!あたしは宝塚と言う場所で、みんなに支えられているからこそ女優が出来るの」
翌日、でじこは麻生首相にこのことを話した。しかし、麻生首相は宝塚などつぶしたほうが世の中のためといって取り合わなかった。
「確かにそうだけど、美香さんがいる以上は助けないわけにはいかないにょ・・・」
「でじこ!こうなったら大臣権限で買い上げるゲマ!」
「そんなことができるのかにょ?」
「でじこは経済産業大臣ゲマ!日本の企業を助け、発展させるのが仕事ゲマ!」
「でも、麻生さんは助けてくれないにょ・・・」
「それなら私に考えがある」
「邦俊さん・・・」
「私だって親戚が失業したら困る。ほおって置けばそれこそじいさんに何と言って詫びればいい?」
作品名:デジキャラット・シンフォニー 3 作家名:細川智仁