デジキャラット・シンフォニー 3
だが、でじこは平田先生のお告げだといって聞かなかった。
開店しても午前中は誰一人お店に足を運ばなかった。
「でじこ!あんたのせいでお客さんが一人も来なくなっちゃったじゃない!」
「平田先生のお告げにょ!自分なら必ずできると信じる者が最後に笑うにょ!」
午後になってある老人が店の中に入った。
「いらっしゃいませにょ」
老人は「プロジェクトZ」の本を何冊か買ったあと、店を後にした。
2時を過ぎると何人か老人が入れ替わり立ち代りに店に入ってきて、4時過ぎには店内が老人たちで一杯になった。
結局その日のゲーマーズの売り上げはいつもの日の倍近くに達した。
「なぜこんなに人が集まったのよ・・・」
うさだがそうつぶやくと、店の外に人影が見えた。
「あれは邦俊さんにょ」
昼間、邦俊は店の近くで紙芝居や大道芸をやっており、その最後にこう言った。
「さあさ、続きが知りたきゃ大須ゲーマーズに寄っとくれ!」
邦俊の芸を見た観客がこぞってゲーマーズに押しかけたのである。
「邦俊さんもしたたかだにゅ」
その時、ぷちこの眼がきらりと光った。
4.久弥の夢
数日後でじこたちはアキハバラヘ戻った。
しばらくして、ゲーマーズの店頭にポスターが貼られた。
「宝塚歌劇団・花組公演 『サクラ大戦 V』
主演・一条きらら 平田美香 於 東京宝塚劇場」
「行きたいにょ〜」
「だったら行かせてあげます」
「店長しゃん・・・」
そういうと店長は封筒を取り出した。
中には劇場のチケット3枚が入っていた。
「平田さんからあずかっていました」
「美香さんの舞台が見れるのかにょ〜」
「あんたに見れるわけないでしょう」
「見に行くにょ」
「だいたい、東京宝塚劇場がどこにあるか知っているの?」
すると店長はでじこたちにJRの回数券を渡した。
「これも平田さんが用意してくれましたよ」
夕方、でじこたちが山手線に乗って東京駅まで来たときのことだった。
「あら、でじこちゃん」
でじこは驚いた。
「美香さん・・・」
「もしかして公演を見に行くの?一緒に行きましょう」
でじこは美香と一緒に次の有楽町で降りた。
美香は有楽町の駅に降りると、階段の下の大黒様の前で頭を下げた。
「でじこちゃん、この像は久弥さんが生前有楽町駅に置いたの。もともとは叔父上が大切にしていた像なのよ」
作品名:デジキャラット・シンフォニー 3 作家名:細川智仁