デジキャラット・シンフォニー 3
「平田先生が拝んだ神様ならさぞかしご利益がありますにょ」
見ると、大黒様の前には平田先生の写真がある。
「この有楽町は叔父上と久弥さんが上本町の次に気に入っていた町なのよ」
「それじゃここに南十字星が現れるのかにょ?」
「それはないけど・・・。叔父上は生前有楽町に小さな神社を作るつもりだったらしいわ。国のため、歴史のために死んだ人たちを有楽町の神社に祭って神様にしてみんなに拝ませるつもりだったようね」
「そういうの、早く作るにょ・・・。でじこにはいつでも久弥さんとお話できる場所が欲しいにょ・・・」
有楽町、その町の名は織田信長の弟、織田長益に由来する。
長益は徳川家に仕え関が原の戦いにも参戦、彼には戦う武将としての才能はなかったが、茶人・文人としてその才能を見せ付けた。
後に「有楽斎」と名乗り江戸に居を構えた。その場所が有楽町であり現在も屋敷跡が残っている。また彼が残した茶室「如庵」は現在でも形をそのままに愛知県犬山市に残っている。茶人としての彼の才能を垣間見ることができる茶室である。
昭和に入り新聞社や東京宝塚劇場が開かれ、戦後になると映画館が立ち並ぶ娯楽の町となった。だが近年は娯楽産業の低迷で町はやや荒れ気味であった。
かつては東京都庁も置かれていたが新宿に移転した。これに強硬に反対したのが道明・久弥親子であった。無駄遣いや現庁舎の有効活用がその理由であった。道明は死ぬまで都庁が新宿に移ったことを認めず、久弥は「新宿仮庁舎」と呼んでいた。後に久弥は都知事になるのだが新宿都庁に登庁することはほとんどなかった。ヒマさえあればでじこを呼びつけてあちこち視察したのだが、周りには人々の生活を調べるため、でじこを政治家にするための教習と言っていたものの本当のところは新宿都庁に入りたくなかったようだ。
東京宝塚劇場では『サクラ大戦 V』の公演が始まった。
カウガールに扮した美香が舞台に現れると割れんばかりの拍手が起こった。
「キャー、ジェミニー!」
美香の役は準主役の「ジェミニ・サンライズ」である。テキサス生まれのお茶目なカウガールがニューヨークの劇場で働くと言う設定になっている。宝塚ではブロードウェイミュージカルは珍しくなかったが、『サクラ大戦 V』は舞台そのものがブロードウェイである。なおかつキャストのほとんどが女の子なので宝塚にはうってつけの脚本だった。
作品名:デジキャラット・シンフォニー 3 作家名:細川智仁