デジキャラット・シンフォニー 4
もともとお祭り騒ぎが大好きなでじこのことである。しまいにはでじこまでが歌い踊るようになってしまった。これにはぷちこもあきれてしまった。
「でじこが一番の大ばか者にゅ」
そのうちに列車は沼津駅に到着していた。するとMintと邦俊は何を考えたのかパックを取り出した。数分後二人はパックを抱えて戻ってきた。パックの中にはおでんが入っていたのである。
おでんといえば名古屋の味噌おでん、関西では「関東煮」と呼ばれているが、静岡県で多く消費されていることは実はあまり知られていない。おでんの材料に必要な海産物の調達が容易であったことと気軽に食べられるため発達したのである。
ことに沼津駅のおでんは久弥が見つけた隠れた名物でもあった。それもそのはずこのおでん屋は50年以上も駅で営業していたのだ。
「味が染みてておいしいにょ〜」
「久弥さんの舌はまちがいないにゅ」
列車が沼津を離れると車内はいきなり静かになった。Mintが「おおシャンゼリゼ」を歌いだした。Mintの思い出話は祖父・道明から父・久弥へと変わったのだ。久弥を語るには中の良かったいとこ・美香の話もしなければならない。美香のデビュー作「ガイズ&ドールズ」、出世作「哀しみのコルドバ」「ミー・アンド・マイガール」、そして美香の最大の当たり役、「サクラ大戦V」のジェミニに至るまでMintは美香を見続けてきた。美香の舞台は欠かさず見に行っていた久弥、しかしその存命中に美香が主役となった舞台を見ることはなかった。「サクラ大戦V」の初演は久弥や美香の親友だったうさだあかりがこの世を去ってから半年後のことである。この時アリーナ席に座っていたでじこの後ろで久弥とあかりの写真を手に持ってじっと舞台を見つめる少女がいた。半年後にデビューするMintの姿である。美香はでじこには明るい笑顔で応えたが、Mintの持った久弥の写真を見ると目頭を押さえていたと言う。
やがて列車は御殿場を経て松田駅に到着した。
「ここが父上の考えた夢列車の最大の見せ場ですわよ」
列車はそのまま小田急に入った。
「すごいにょ!岐阜からそのままアキハバラへ向かっているにょ!」
「父上は無理な計画は絶対に申しません」
しかし、都心に近づくにつれ、なぜか人々の動きがあわただしくなっていた。
「何が起こったのでしょう?」
作品名:デジキャラット・シンフォニー 4 作家名:細川智仁