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デジキャラット・シンフォニー 4

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「まさか、久弥さんが不正手段でもうけた隠し財産ですかにょ?」
「政治家なら必ずあるにゅ」
「ちがいます」
Mintがでじこに渡した資産は、生前の久弥が合法的な資金運用で築いた資産だった。但しその方法が卑劣だった。倒産寸前の会社に投資して荒利を稼ぐ「パニック・ファンド」やドルが円安になればなるほど儲かる「日本叩き売りファンド」などの手法でこっそり稼いでいた資金である。
「お父様の『日本叩き売りファンド』は当時二十数億円もあったといいます。雪だるま式に膨れましたが、お父様は決して自分の政治資金や生活費にこのお金を使うことはありませんでした。『日本人が日本を叩き売るなど国そのものの将来を信じなくなるようなばかげた世の中は長く続きはしないよ。いずれはその反動でナショナリズムが高まる世の中が来る。このお金はその時に国を守るために使ってもらう』。お父様はでじこさんに世の中の建て直しを期待しておりました。ですからこのお金はでじこさんが受け取るものですわよ」

9.飛ぶ教室
でじこはそのお金はありがたく受け取ったが、有り余るお金にはあまり興味がなかった。それよりも本に夢中でぷちこと二人で平田図書館の後片付けを名目に本を読み漁っていた。
平田図書館の片隅に「子供と識者のための文庫」と言うコーナーがあった。そこには道明が集めた数々の児童文学が保管されていた。そこにはこう記してあった。
「この場所には子供たちのための本を集めたが、読む人は子供に限らない。そのため私はここを「子供と識者のための文庫」とした。子供たちが大きくなっても必ずここへ帰ってこれるように、帰ってきたら子供たちは識者になっていることを願っている」
中でもエーリッヒ・ケストナーの作品は道明が好んでいたのであろう、「エーミールと探偵たち」、「点子ちゃんとアントン」、「飛ぶ教室」、「五月三十五日」、「二人のロッテ」、「動物会議」などがあった。不思議なことに「私が子供だったころ」はケストナー著と平田道明著の2つがあった。たぶん平田先生がケストナーのまねをして書いた本なのだろう。
邦俊はそれらの本の解説を引き受けた。さすがは「ラプソドス団」の団長である。邦俊の語り口はでじこたちを飽きさせることはなかった。
そのうちにでじこは「飛ぶ教室」に興味を持ち始めた。