デジキャラット・シンフォニー 4
久弥の死後一度だけ議場に「黄色いリボン」が流れた時がある。それは久弥に反対していた原口派が都議会を解散して人民議会を作ろうと画策していたときに、これに反対した渡辺が久弥のテーマ「黄色いリボン」のメロディーに乗って登場した。これには議員たちは唖然としていたが、傍聴席を埋めた一般市民たちは拍手喝さいをあびせた。
「おおっ!「黄色いリボン」!平田久弥のテーマだぜ!」
「渡辺さん!がんばってください!」
最後には原口派は久弥の遺志を受け継いだでじこたちが倒してしまうのだが・・・。
「渡辺さん、でじこはバカたちを退治しに行くにょ!さあ、どこにょ!」
「でじこちゃん落ち着いて、まあゆっくり話そうか」
渡辺は何とかでじこをなだめようとした。
「まず久弥に最初から反旗を翻した銀行は有楽町駅の北側にある。しかしここは手を出すには及ぶまい」
有楽町と東京駅の間にあった銀行の本店ビルは、でじこたちが有楽町で水銀燈と戦った時にミルフィーユ秘書が手違いで爆破してしまったのだ。
「ひょっとして、それで銀行は平田家を恨んだんじゃない?」
「まさか、ただ銀行を攻撃しても意味がないことは確かだ」
「天罰の先払いですかにょ」
そのときでじこは邦俊さんが言っていたことを思い出した。
「この東京駅の丸の内口の一帯は別名「三菱村」と呼ばれていて三菱の本社があちらこちらにある」
これは三菱の創始者・岩崎弥太郎が明治維新後寂れていた練兵場跡地を買い取り社屋を立てたためだった。
「そこを探せば重工の本社くらい見つかるにょ」
「ないよ」
重工の本社はすでに数年前にここから出て品川へ移転していた。
「品川かにょ!ぷちこ、行くにょ!」
でじこが飛び出した。
「ちょっとあんたどこへ行く気よ?」
「まさか品川の重工本社を真っ黒焦げにする気ゲマか?」
「ちがうにょ!杉本さんのところに行って相談するにょ!」
うさだもゲマもそう聞いてでじこは成長したなとつぶやいた。
だが真紅だけが一人不安を感じていた。
でじこは宮殿内にある杉本侍従長の執務室に押しかけた。
「これはでじこちゃん、何か用かな?」
「杉本さん、教えて欲しいにょ!平田先生と久弥さんが生涯をかけて学んだ陽明学とは何ですかにょ?」
杉本侍従長はでじこも高度な学問を身につけようとしているのかと喜んで講義を始めた。
作品名:デジキャラット・シンフォニー 4 作家名:細川智仁