デジキャラット・シンフォニー 4
その日は月も無く真っ暗闇の夜だった。交通量も少なかった。そこに100台以上のトラックが集うさまはまさに圧巻だった。
「そういえば平田先生の最後の言葉を思い出すにょ・・・」
でじこが平田先生と一緒に独裁者を倒してアキハバラへ帰る時、各地の歓迎で酒を飲み、疲れてしまった平田先生は愛知県内で寝込んでしまった。やがてでじこたちを乗せたバスが東名江田を通った時、平田先生が目覚めた。
「今どのあたりだ」
「まもなく東名川崎ICゲマ」
「そうか、東京料金所を通過したら教えてくれ」
バスが東京料金所を通過すると、平田先生はでじこを連れてバスの最前列に来た。ちょうど多摩川の手前で平田先生がつぶやいた。
「でじこちゃん、ここが私が一番好きな景色だよ」
そこは緩やかな下りになっていて、目の前に川と道路が広がっていた。
「この景色を見ると東京に帰ってきたという気がするなあ・・・」
それが平田先生の最後の言葉となった。
バスが首都高速に入ると平田先生はへたりこんでしまい、アキハバラでの祝賀パーティには立っただけで一言もしゃべらずに壇上から去った。次の日の朝、ゲーマーズの3階で平田先生は静かに息を引き取った。死因は飲みすぎによる肝硬変だった。
「確か久弥さんに聞いたことあるにょ・・・。」
「東名高速を西へ進めば名古屋、京都、大阪と通り、西宮の町で名神高速道路は終点となり、そのまま阪神高速を経て、右手に六甲山を見て、春日野道のインターチェンジで降りる・・・」
春日野道の次の駅が三宮である。
やがて、深夜にトラックは由比付近を通過した。
でじこはここでトラックを止めると、ここがゴミ捨て場といって瓦礫をみんな捨てさせてトラックを東京へ返した。真っ暗なので誰も気付かなかった。
翌日の朝、東名高速と国道1号線が封鎖されているのが確認された。でじこが瓦礫を捨てさせた場所は実は道路の真上だったのである。瓦礫はバリケードとなって東西の交通をふさいだ。
かつて久弥は東西間の交通の一番の弱点は由比だといっていた。この地は東海道が走るにもかかわらず山が海岸まで迫っており、東海道線、国道1号線、東名高速がひしめいている。もし地震で壊れたら東西の交通は止まると危険を感じていた。
でじこはついでに周りの山も目からビームで破壊した。これでちょっと目には土砂崩れのように見えた。
次の日の朝、由比の町は騒然となった。
作品名:デジキャラット・シンフォニー 4 作家名:細川智仁