デジキャラット・シンフォニー 4
町は瓦礫の山に覆われ、東西の交通が遮断されて大騒ぎになってしまったのだ。
12.愛知共和国独立
さて、でじこが豊橋で出会った杉浦社長はこの知らせに驚いた。
杉浦社長の工場は主に関東方面へ工業製品を出荷していた。東名高速が寸断されると関東へ製品を出荷する術が無くなる。だが杉浦社長はこれは大変革のチャンスだととらえたのだ。
「みんな!愛知は独立国家として日本から独立するんだがね!」
社員たちは口々に社長の夢物語だよと言って取り合わなかった。常務でさえ社長は気い狂うたんとちゃうかと感じた。しかし杉浦社長は本気だった。杉浦社長は自ら豊橋市長に面会した。
「杉浦さん、そりゃあんたの考えは無茶と違いますか?」
「愛知が東京の支配をうけとること自体間違っとるわ!関東は一都六県でやっと日本の中心だ言っとるけど、愛知は一県で日本のGDPの1割、世界のGDPの1%を作っとるんだって。金のあるやつが偉いというなら愛知が日本で一番偉いんだって。どうがんばったってしょせん商人はものづくりには勝てせえへん。最後に勝つのはものづくり、愛知だがね」
豊橋市長は根負けして「わかった」とだけいった。
これが大げさに伝わり、続々と杉浦社長に同情論が集まった。
小杉総理はじめ日本政府の関係者ははじめはどうせ冗談だろうとたかをくくっていた。
だがその間に杉浦同情派が愛知県内各地に集まり、気付いた時にはすでに豊田市を本部にして独立準備委員会まで出来上がっていた。
自衛隊を出動させようにも守山師団の幹部までが委員会に加わった上、東京から部隊を派遣しようにもでじこが起こした由比の交通遮断で動けなくなっていた。
由比の瓦礫は11日目にようやく一部の撤去が完了して国道1号が片側通行ができるようになった。その日に杉浦社長は豊田市で愛知共和国の独立を宣言した。
この時点でも小杉総理はまともな状況判断ができていなかった。瓦礫の撤去が予想以上に遅れた上、東西の連絡もままならない。いまどきの日本で独立国家なんてそんな冗談をやる資金と度胸があるわけないと思っていた。
だが杉浦社長は本気だった。
「ええか、わしが作るのはファシズムや。ファシズム言うのは本来「束ねる」いうことだがね。世直しするには人を束ねんといかん」
その日のうちに愛知県議会をそのまま国会にして愛知の独立を宣言し、杉浦社長はそのまま大統領に納まってしまった。
作品名:デジキャラット・シンフォニー 4 作家名:細川智仁