デジキャラット・シンフォニー 4
「もし父上(尾崎和夫)ならこんな時だったら真っ先に海兵隊と戦うだろう、だが相手は軍隊だ、むやみやたらと争って犠牲者を出したら父上はほめてくれるが平田先生には笑われるだけだ。どうすれば犠牲を少なくできるか・・・」
守道は市場の人たちを集めて末期の酒だといってワンカップを一人一個持たせて乾杯させた。そこへ海兵隊の面々がやってきた。血気にはやる海兵隊に守道はしきりにビールや日本酒を勧めた。もともと教育程度の低い軍隊だけに酒には目がないものも多かったのである。だが酒には当然肴がいるが守道はわざと用意しなかった。
そのうち海兵隊員たちは市場の生簀で泳いでいる魚に目をつけた。これを肴にしてみんなで飲もうと言う腹つもりである。しかしここは名高い下関南風泊市場である。海兵隊員たちは何の知識もないまま名物のふぐをそのまま軍用ナイフでさばいて食べたのである。当然海兵隊員たちは次々と毒に当たって苦しみだした。これに驚いた海兵隊は無事な者をまとめて引き上げようとした。その時だった、守道は海兵隊員を襲ったのである。無事に岩国基地へ引き上げた海兵隊員は半分もいなかったと言う。
さて翌朝、シンガポールでは魚市場でこんな会話が交わされていた。
「邦俊さん」
「おお、みけちゃん。今日も魚は釣れたかね?」
「大漁みゃ!」
「おいしいのはあったかね?」
「マグロがあったみゃ」
「これはインドマグロだね、トロは少ないが赤身がうまい魚だ。久しぶりに刺身でも作るか」
「賛成みゃ!」
邦俊はシンガポールに流されてからというものは悠々自適の暮らしだった。活発でつり師のみけが朝早くに出かけて釣った魚を魚市場で売りさばき、いい魚があれば魚市場から他の魚の売却代金と一緒に持ち帰る、そこに邦俊がみけを迎えに来るのが毎朝の日課になっていた。邦俊がみけを迎えに行くのにはもう一つのわけがあった。それは新聞を買いに行くことだった。シンガポールはもちろん日本以外の国には新聞の戸別配達制度そのものが存在しないので新聞を買いに行かなくてはならない。
邦俊は「ストレード・タイムス」や「アジアン・ウォールストリート・ジャーナル」などを買っていた。戸別配達がないので新聞は日本よりはるかに安く1ドルもあれば高級紙が買えてお釣りも来たくらいだった。
作品名:デジキャラット・シンフォニー 4 作家名:細川智仁