デジキャラット・シンフォニー 4
邦俊がみけと一緒に自宅へ戻り、朝食用の魚をさばいて刺身にしたところで朝に弱いミルフィーユ秘書が起きてくる。
「おはようございます・・・」
「ミルフィーユさん、その朝に弱いのは何とかならんかね」
「そんな事言われたって仕方ないですよ・・・」
寝巻きのまま寝ぼけ眼だったミルフィーユ秘書だったが、邦俊が買ってきた「ストレード・タイムス」を読んで一瞬にして目が覚めたようだった。
「邦俊さん、大変ですよ!」
「はあ?まだ寝ぼけているのか?ごはんにするぞ!」
「ごはんどころじゃありません、この新聞見てください!」
邦俊は新聞どころではないと朝食の支度を始めたが、みけが新聞記事を見て驚いた。
「これ、お魚博士(尾崎和夫)さんの息子さんみゃ?」
「何だって?」
邦俊はあわてて新聞を取り、新聞記事を見た。
「確かにこれは守道さんだが、どうしてシンガポールの新聞に・・・。まさか守道さんのことだから短気を起こしたんじゃないか?」
「なんて書いてあるみゃ?」
「どうやら守道さんが海兵隊を相手に大暴れしたらしい、困ったことになった・・・」
邦俊は大慌てでNHKラジオジャパンを聞こうとした。だがNHKは種種の問題を抱えていて放送どころではなかったのである。
邦俊は朝食もそこそこに済ませて日本大使館や三菱重工シンガポール支店を回ったが、どちらも大混乱で収拾がつかない有様だった。邦俊はこれは日本で大変なことが起きていると感じたのだ。
最後に邦俊はシンガポール放送協会(SBC)を訪れた。そこで邦俊はでじこによる三菱重工本社ビル爆破や由比の海岸への瓦礫の投棄に始まる東西交通網の寸断、愛知共和国の独立宣言、今村禅師の事件から南風泊の事件まで全てを聞きだしてしまった。
邦俊はすぐ自宅に戻りみけとミルフィーユ秘書にこのことを伝えた。
「ここに至っては困難なことではあるが、みけちゃんの船で日本に戻ることにした。これ以上でじこちゃんや守道さんたちに勝手をやらせることはじいさん(道明)や伯父上(久弥)が許さないだろう」
「邦俊さん、三菱重工はどうするんですか」
「事務所に行ったところでもはややる仕事などない。明日にでも辞表を出す」
翌日、邦俊は事務所に辞表を提出し、直ちに帰国の準備に入った。
そのうわさはたちまちシンガポール中に伝わった。中でも魚市場ではそのうわさでもちきりだった。
作品名:デジキャラット・シンフォニー 4 作家名:細川智仁