デジキャラット・シンフォニー 4
これに怒った重工派の社員たちは平田道明・久弥・でじこの写真を掲げて上本町で大規模なデモを行ったのである。
三菱重工本社ではその知らせが入ると喝采の声が響いたが、デモ隊も平田一族が重工社員だということが伝わるとすぐにでも来てくれと言う声が上がった。
翌日、谷口社長は自ら邦俊を引きつれ上本町にやってきた。Mintもでじこたちも一緒だった。
「まさか、平田先生の孫がわれらと同じ重工社員だったとは」
「みなさん、私が重工社員であるということは、重工が銀行に負けるならば平田の歴史学が、上本町が消滅すると言うことです。平田の歴史学を信じる人は重工の勝ちを信じてください」
「金だけの奴が勝ったためしがないにょ!」
デモ隊は6万人に達し、上町筋から天満橋へ、淀屋橋から梅田へと続いた。
だがこれが悲劇を招いた。梅田は銀行派の三菱地所の土地だった。ここで重工派と銀行派が衝突した。
この有様を見ていたMintは、かつて父・久弥が言っていたことを思い出した。
「お父様、もし日本が共産主義になったら、日本はソ連のように悲惨な国になってしまいますわ」
「文子(Mint)、ソ連や中国の共産主義は本物とは違うぞ。発展途上国で共産主義などやってもそれは本物にはならない。本当の共産主義というのは日本のように先進国、経済大国から起こるものだ。格差が広がれば階級闘争が起こる。その結果として共産主義が生まれるのだよ」
Mintは久弥の目には100年先の未来でも見ているような気がしてならなかった。
「でも、お父様の言われたことは100年どころかわずか3年で本当になりましたわ」
「伯父上の考えは階級闘争を起こさせる気だろう」
「邦俊さん!」
「Mint、これからすごい速さで世の中が変わっていくぞ!伯父上の予言どおり、でじこちゃんがこの国を救うかも知れん。それをじいさんたちと一緒に六甲山の空の上から眺めていることだろう」
三菱重工でのでじこの人気はすごかった。それまで固い企業のイメージだった三菱重工がでじことぷちこをイメージキャラクターとして採用したのだった。しかもCMソングはMintだった。
4.今村光文の「極道辻説法」
下関でコーヒーを飲みながら三菱重工のCMを見ている男がいた。元、水産大学校校長・尾崎和夫の長男、尾崎守道と守道にあずけられたでじこの友人、みけだった。
作品名:デジキャラット・シンフォニー 4 作家名:細川智仁