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デジキャラット・シンフォニー 4

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この男、尾崎守道も変わり者である。常に着流しを着て暴れまくり「唐津の無法松」の異名すら取ったが、なぜかコーヒーだけは欠かさなかった。
守道が飲むコーヒーは決まってエクアドル産の「カフェ・アンデス」だった。
そこへ一人の修行僧が現れた。
「久しぶりじゃのう、守道」
「先生!」
守道が先生と呼ぶ修行僧の名は、今村光文といい、旅をしながら世界中で悪い奴らを懲らしめている僧侶であった。下関に近い防府市の出身で予科練では尾崎和夫の後輩である。その後唐戸の魚市場や大洋漁業で働いた後に出家。しかし魚市場の熱い血は抜けきれず「破戒僧」として知られていた。
「久しぶりに日本に帰ろうと思ってな」
そういうと、光文は新聞記事を差し出した。それは旧字体も使ってあり、いかにも昔の古い時代の新聞のようだった。しかし日付は先月の日付である。新聞の題字は「らぷらた報知新聞」と書いてある。
その昔、報知新聞は現在のようなスポーツ新聞ではなく読売とは独立した普通の新聞紙であった。創立者は郵便制度の創始者、前島密である。世界中に支局を置くのは新聞社の使命だが、報知新聞も例外ではなかった。昭和初期にアルゼンチンのブエノスアイレスに報知新聞が支局を置き、現地日本人向けに新聞の発行を始めた。題名はブエノスアイレスを流れるラプラタ川から取った。それが「らぷらた報知新聞」である。
やがて戦争が起こり、南米は戦火からは免れたが日本との連絡が取れなくなったため支局は本体から独立し「らぷらた報知新聞社」として現在に至るまで新聞を発行し続けている。
でじこたちが国連総会に出席している時、光文はブエノスアイレスにいた。
「この「でじこ総理」に会いたくてな、日本に戻ってきたのだ。何か物の怪でもついているのは間違いないと思ってな、地球の裏側から電話をかけるにも大変だし」
インフレが激しいアルゼンチンでは電話はあらかじめ「トークン」と呼ばれる電話専用コインを購入しなければ電話をかけることはできない。電話料金の値上げが激しいため値上げの都度、機器を改修していると大変なことになる。そこで電話専用のコインを用意しておき、それを売店で販売する方式にしたのである。これなら電話料金が変わってもコインの販売価格を変えるだけでいい。物価が不安定な国で多く使われており、フランス、イタリアなどでも同じように電話用コインが売られている。