デジキャラット・シンフォニー 4
「イベントや 時の流れと 人の身は」
「明日待たるる その浜松町」
これは浜松町の同人イベントに参加した時の久弥の歌である。
「そろそろいくか? 正也?」
「ああ」
邦俊と正也はバズーカ砲を手に取り、次々と韓国軍のジープめがけて撃ちまくった。二人に狙われて逃げられたものはいなかった。
そこへでじこたちも到着し一斉に韓国軍との地上戦が始まった。
もはやでじこが「目からビーム」を使う必要はなかった。韓国軍は大混乱を起こした上、でじこの名が広く知られていたためだった。
韓国軍は6300名の死者を出して敗走し、東京侵入を阻止された形になった。
このニュースは直ちに全国に配信された。中でももっとも驚いたのは名古屋である。
翌日早朝には和歌山沖に停泊していた海上自衛隊の巡洋艦が伊勢湾に入り一斉に砲撃を開始した。これに応えて愛知県民の一斉蜂起が始まったのである。もともと現状維持を望まず政府にも期待していない住民であるが、自己主張が強くあくが濃い県民性だけにまとまることは難しかった。しかし杉浦大統領があらかじめ愛知共和国独立宣言をした際に「隣組」を復活組織させて末端まで強固な組織を作っていたことが愛知県民を団結させたのだ。あっという間に杉浦の片腕で副大統領だった加藤浩正が頭角を現し愛知をまとめてしまった。
一方、在日コリアンたちと占領軍との争いが続いていた大阪鶴橋にもこのニュースは伝わった。
かねてから「平田先生の後継者」とされていたでじこである。鶴橋の隣町上本町にはいよいよ平田先生の南十字星が現れるとのうわさが流れた。南十字星が現れれば世の中は大逆転する。そう信じた大阪市民がまだ日の高いうちから続々と上本町に詰め掛けてその数は15万人を越え、上町筋を埋め尽くした。
午後8時、ラジオ・オーストラリアが「ワルティング・マチルダ」とワライカワセミの鳴き声を流し、それに続いて歓声が上がった。「平田先生の南十字星」は確かに上本町の空に輝いたのである。
この瞬間から関西各地で破壊行動が始まった。
道明が愛した上本町ではレジスタンスによる抵抗が続いていた。もともとこの町では1979年に「ハイハイタウン」ができるまでバラックだらけの粗末な建物が並んでいた町なのである。住民たちは平田先生が南十字星に姿を変えて助けてくれると信じていた。
作品名:デジキャラット・シンフォニー 4 作家名:細川智仁