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デジキャラット・シンフォニー 4

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それは小さなパン屋だったが、看板に「サン・ジェルマン」と書いてあった。
でじこでもその名は知っていた。久弥が生前ひいきにしていたパン屋だったからである。
「久弥さんのパン屋があると言うことは、この町にも久弥さんの痕跡があるかもしれないにょ」
「その通りだ」
後ろで声をかけた大男にでじこは見覚えがあった。渡辺華仁である。
かつて久弥は選挙に落選して一時でじこたちのいるゲーマーズアキハバラ店に副店長としてやってきたことがあった。しかしでじこたちが久弥の経歴を知るに至り、でじこたちは何とかして久弥に政治家に戻ってもらおうと願うようになった。
そんな時に久弥の政治家時代の親友だった渡辺華仁が久弥に都知事選立候補の話を持ってくるのである。でじこが選挙を手伝った結果、久弥は都知事に当選した。
「そういえば渡辺さんの故郷は豊橋でしたわね」
渡辺華仁の曽祖父は明治初期の日本画家、渡辺小華である。彼は幕末の日本画家渡辺崋山の次男として生まれ、父の死後田原藩家老職を継ぎ、廃藩置県までその職にあった。廃藩置県後は父の作品を持ち、父が歩んだ日本画家の道を歩んだ。
だが、時は文明開化の世、日本画が世に受け入れられる時代ではなかった。彼は貧困のうちにこの世を去るが、彼が育てた弟子たちは日本各地で終戦に至るまで活躍し続けた。
現在でも豊橋市博物館では渡辺崋山・小華親子の作品を目にすることができる。
渡辺小華が絵を描くために作らせた筆は後に伝統工芸品・高級筆「豊橋筆」の母胎となった。
渡辺華仁は早速でじこたちを連れて市役所に掛け合ってくれた。しかし市役所は個人情報保護法を盾に調査に協力してくれなかった。

翌日、早速ゼネストで日本中に混乱が起きたが、JR東海は銀行側に属していたためゼネストには参加しなかった。名鉄は重工側に属していたが大規模なストライキで国民に迷惑をかけるのは自分たちの主張が正当だとしても許されることではないと考え、ゼネストには参加しなかった。これに小田急や近鉄も同調し結局鉄道会社でゼネストに参加したのは阪急電鉄1社にとどまった。このため豊橋では大手企業の工場がいくつか止まったことと、港や船で働いている港湾労働者たちがストライキを起こしたのを除いては町は至って平静であった。
ゼネストではでじこたちも動きようがなく、豊川稲荷へ観光に出かけた。