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末裔

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・・・く、まだ完全ではない。私の思い通りにはならないか・・・
貴様に身体は渡さない
・・・強情な奴だ・・・
あのモンスターはお前の仲間なのか?
・・・見ればわかるだろう・・・
あいつらはどこから来る?カオス、お前の目的は何だ?
・・・それは貴様がよく知っているはずだ。思い出せ、忌まわしき遠い記憶を、我々の恨みを・・・
何のことだ?私の失われた記憶のことなのか?
・・・くくく、さあな。とにかく目覚めるのだ、私とお前は一心同体・・・
何だと
・・・時はすでに満ちている。急がなければ・・・

 ヴィンセントはおもむろに目を開けた。脇腹が疼く。
「あなた、良かった・・目が覚めたのね」
「ルクレツィア・・」
「気分はどう?私も気絶しちゃったんだけど、運良くヴォルドさんが通りかかってセフィロスの泣き声に気がついて・・私たちをここまで運んでくれたの。後片づけが大変だったみたい」
「そうか、後で礼を言わねばならないな・・・セフィロスは?」
「大丈夫よ」
「よかった・・・」
 ヴィンセントは放心状態で宙を見つめる。
「どうしたの?あなた」
「ルクレツィア・・私は・・どうなった?カオスになったのか?」
 ルクレツィアは何かを思いだしたかのように硬直した後、静かにうなずいた。
「そうなのか・・私の力ではお前達を守ることができなかったんだな、それでカオスに頼ってしまった・・すまない、約束を守れなかった」
 ルクレツィアはたまらないような表情になった。
「何を言うのよ、あなた。あなたは私たちを助けるためにカオスになったんでしょ?それにあなただって・・・カオスの再生能力がなければ死んでいたわ。私たちが助かったのはカオスのおかげなのよ。もういいわよね、カオスを嫌う必要ないわよね」
「違うんだ、ルクレツィア、カオスは・・・くっ」
 ヴィンセントは起きあがろうとして脇腹に激痛を感じそこでうずくまった。
「無理しないで、この前打った薬のせいだと思うの。カオスの再生能力が不完全みたいで。傷がまだ深いの。お願い、安静にしてて」
「カオスは私の身体をのっとろうとしている。それも強い意志で」
「え?」
 堰を切ったように彼は話し出した。
「ここのところ、夢の中でカオスがずっと語りかけて来る。いや起きていてもはっきり声が聞こえる。私の身体が狙いのようだ。その目的はわからない。しかし、あいつには意志がある。今日のモンスターもあいつの仲間だ。私をカオスに変態させることが目的だったようだ。ずっと抵抗しようとしたが・・・できなかった」
 声がだんだん沈痛になっていく。
「あなた・・・」
「セフィロスを追ってクラウドたちと旅をしていた頃は、自分の中に飼っているモンスター達に飲み込まれてしまっても構わないと思っていた。それが罰であるなら、それも受け入れようと思っていた。セフィロスを倒したことで罪を償いきったとは思っていない。まだ、足りないのであれば何でも罰を受けようと思っていた。しかし、お前と一緒に暮らすようになってセフィロスが産まれて・・怖くなった。カオスに飲まれてしまうことが。私はすっかり弱くなってしまった、お前達を守るどころか殺してしまうかもしれない・・・お前達だけは失いたくない・・怖いのだ・・」
 彼の身体が震え、紅い瞳が潤んだ。
 彼女はうなだれる彼をそっと抱きしめて言った。
「気弱にならないで、あなた。初めからあなたに罪なんてないわ。それにあなたなら大丈夫よ。カオスなんかに負けない・・。たとえ、あなたが永遠にカオスに変わってしまっても私はあなたを愛してる。だって言ったでしょ、覚えてる?あなたが何者であってもあなたは私のヴィンセントよ。例え、殺されたとしてもあなたに殺されるんだったら私何でもない、お願いしっかりしてあなた」
「ルクレツィア・・」
「さ、横になって、ゆっくり休んだ方がいいわ」
「ありがとう」
 ヴィンセントは再び横たわると目を閉じた。

 ルクレツィアは部屋を出て、セフィロスの様子を見に隣の部屋へ入った。
 セフィロスは昼間の出来事を覚えていないかのような安らかな寝顔で眠っていた。
 カオス細胞を研究している内に、そのずば抜けた能力を彼女は把握していたし、半ばカオスとなった夫の姿を見たこともある。しかし、完全に変態した夫を実際に見るとあまりの凄まじさに戦慄を覚えた。思い出すと今でも震えが来る。彼にはああ言ったが、ルクレツィアにとってもヴィンセントがカオスに飲まれてしまうことは怖かった。もし、彼がカオスのまま二度と戻らなくなったら・・・どうすればいいのか?
 夫があんなものを背負っていたなんて・・彼女は改めて彼にカオスを渡してしまったことを悔いた。
「セフィロス・・どうしたらいいんだろうね・・」
 とりとめもない不安に駆られ、彼女は涙が出た。
(泣くな・・)
 彼女は涙を拭った。
(こんなところで泣いていたら、あの時と一緒になってしまう。滝の裏で泣くしかできなかった日々。もうあれを繰り返しちゃダメ・・そう、辛いのは私だけじゃない。あの人が一番苦しんでいる。必死でカオスと闘って・・身も心も傷ついて・・ここで私がしっかりしないとダメ。うん、大丈夫。あきらめちゃダメ、きっと何とかなるから)
 彼女は懸命に自分に言い聞かせると、研究室へと向かった。
 もう手持ちの材料ではカオスをどうすることも出来ない。それは彼女も認めざるを得なかった。カオスはもはや宝条が産みだしたものではなく、科学を超越した存在であり、科学的な方法で無に帰すことはできないと彼女は思い始めていた。
「科学者としては悔しいけど、仕方がないわ」
 彼女はそれまで宝条の残した研究レポートや実験データにしか目を通していなかったが、それ以外にもカオスに関するものは何でもいいから見つけようと資料を漁り出した。

作品名:末裔 作家名:絢翔