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声が聞こえる

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どこでも危ないやつに変わりは無いか…。暴走してるよな。これをどうにかしろと言われても…。
ボーつとしてるうちにまた口付けてくる。最初は探るようにそしてだんだん貪るように。

やはり似てると思いながらどんどん力が抜けてゆく。応えることも厭うことも出来ない…。
不味いと思っても意識が保てない。おぼれるような感覚で闇に引きずり込まれる。凍るように冷たい…。体に力が入らない…。
息が切れる。やばいなあと頭の片隅で考える。

ドンと胸を叩かれヒューって音と共に息を吐く。息が止まってたのか…。背中を丸めながら咳き込む。苦しい…。
背中に手が触れる。もう冷たくは無いが触れられたところから痺れるような感覚が広がる。

「触るな…。」
びくっと手が止まる。
「力がぬけるんだ…。」
凄くだるい…。慌てて手を引くのを感じてなんか笑える。

上を向いて横になって眼を押える。明るいけど暖かくは無いんだな…。光があるのが不思議な気がする。
ちらっと横を見ると隣に座ってじっと見てる。何だろ急に大人しくなって。逃げる心配がないからか?

「何か話して…。」
「え?」
「このままじゃだるくて寝ちゃうけど…。」
「それでもいいが…。」

「何か言いたいことがあるんじゃないのか?」
人ば強引につれてきて見てるだけで良いとか言わないだろうし何時でも殺せる。
じっと見てると殺気が消えてる。なんかボーつとしてるな。

「直接触れなければいいのか?」
「さあ?」
ばさっと布をかぶせて軽くたたく。そのまま手を置いている。時間と共にじんわり痺れてくる。

「駄目だな。痺れる…。」
見るからにがっくりしてる…。おい…。

「とにかくなんか話して。」
「何を?」
「何でも良いから。」
「そう言われても…。」

さつきまで聞かれもしないこと喋っていたくせに。ボーつと人を見てるなあと思ったら涙が出てる…。

ぎょっとして身を起こすとまだボーつと人を見てる。いや?見てるものが違うのか?そのまま涙を流してる。
大丈夫な訳ないがどうしろっていうんだ…。

なすすべもなく見る。綺麗だな…。どこにいても何をやってもそう思う。
つい手を延ばして涙に触れてしまう。

触れた指先から沁みてくる感じ…。それから音…。何か音が…。触れてくるものを感じる。

「そう…。泣けなかったのか。」


泣いて忘れてくれれば良かったのに。忘れて生きていってくれればそれで…。憎まれてもよかったんだ…。

その気持ちはわかるけど。まあこんなことになるとは思いもしなかっただろうな。普通考えられない。

何でそんなに執着するかね。愛なんだか憎しみなんだか…。本人にもわからないんだろう。
なんにしてもそれに縋ってはいけないのに。と言っても聞かないか。

今はただ何も考えないで泣いてるから綺麗なんだな。
そっと髪に触れてみる。実体を感じない…。
なんか一枚布で覆った感じ…。涙に触れた所為か?

なんにせよかえって安心して触れられる。
少し近づいて頭を抱きかかえる。

「ちゃんと悲しまないから駄目なんだよ。」
「認めたくない…。」

「死んだものはかえらない。よく知っているだろうに。」
「おいて行くな…。」

「あなたはもっと先に行くんだよ。こんな所にいないで。」
「一人は嫌だ…。」

「人は皆一人だ。だから他人が必要なんだろ。」
「冷たいな…。」
「そう?」

下を向いたまま「やはり違うんだな。」と呟く。

抱えてた腕を外して真直ぐおれを見る。その目はまだ暗いがさっきまでより落ち着いてる。大分正気になったようだ。

「どうしてさわれるんだ?」
「さあ?でも感触変なんだけど。手を貸して。」
手のひらを合わせてみると薄い幕を張ったような感触がある。

「何だ?」
「そんな事おれにわかる訳ないだろ。」
何か考えてるなと思ったら頬に手をあててキスをする。

「ふむ…。」
もう一度今度は舌を入れてくる。嫌な感触に驚いて払いのける。
「…ゴム噛んでるみたいな。」
気持ち悪い。

「美味しくない…。」
わざわざ確認しなくても…。
「何考えてるんだ…。」
「さわれるならやれるかと。」

「本気で言ってるのか?」
「半分本気だ。」
「何だよ半分って。」

「確かめたいような。確かめるまでもないような。同じ顔なのにどうして違うんだ…。」
「そりゃ同じだったら分かれている意味がないからじゃないのか?平行宇宙ってそう言うもんじゃないの?」
呆れたように人を見る…。

「だからと言ってこんなに違うのは…。詐欺だ…。」

すみませんねえ。同じだったら死んでんじゃないかなあ。庇って死ぬのは別に良いんだけど…。
こんなの残すのは気が進まない。社会に迷惑。個人的には落ち着いて死んでいられない…。

その辺に漂って…いるのか?いたとしてもぜんぜん気がつきそうも無いな。じっと見てるだけで何も言わない。
「文句があるなら言えば?」

「これ以上言いたくない…。」
「呟いただけだろ。あなたが一番言いたい人の代わりに聞くから。」

あんなの言ったうちに入らない。溜め込みすぎが悪いんだろう。だんまりを決め込んでるので気が進まないけど言うだけ言わないと…。

「そんなに怒るなんて思わなかったんだけど…。」
「誰が。」
と睨んでくる。
「あなたを庇った人。」

がっと襟元を掴かまれてそのまま引きずり倒された。
「いっ…。た…。」
「何のつもりだ。」
殺気すらおびている。その目を見ながら

「聞こえるんだ。あなたの涙に触れてから。」
「何を…。」
「少しぐらい泣いてくれてそれで忘れると思ったって。」
目をそらして力なく呟く。

「アムロらしい…。」
硬く眼を瞑って
「二人ともわたしを庇って死んでいったんだぞ。わたしはもう失うことに耐えられない…。どこかに生きているんじゃないかと探して…。」
「それで?」

「…みんな死んだ。行き先々で…目の前で…。」
横たわったまま手を伸ばして髪に触れる。拘ってるからかえってそんな場面に行き当たるんだろうな。

「馬鹿だね…。」
また睨まれる。
「アムロはそんな事言わなかった…。」
「そう?」
にっこりして言う。

「わたしの言うことに反対など…。」
「本当に?」
遠くを見るような目で暫く考える。

「いや…。いつも目で訴えていたな。それでいいのかと。」
「随分大人しいんだな。」
とても自分と同じとは思えないが。

「最初に服従すると約束させたから。」
「横暴だな。」
「わたしに負い目があったからだろう。」
「あなたねぇ…。」

負い目はあるけどそれはララアにで…。言うこと聞かせるのに何やったんだか。ろくな大人じゃないな…。

「憎まれても手放す気はなかった。まさかわたしを庇うとは…。」
「おれでも庇うと思うけど。」

「何故だ。自分が死んでは元も子もないだろう。」
「庇うに値するから。世界に必要だと思う。」
「わたしにはきみが必要だったのに…。」

「戦力として?補充はきくだろ。」
「きみの代わりなどいない…。」


ララアの代わりにしてただけだ…。

疲れたような声が聞こえイメージが伝わる。


戦場においては常に側にいて。隣の部屋をあてがわれて気まぐれにベッドを共にする。
作品名:声が聞こえる 作家名:ぼの