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【テニプリ】ヒカリノサキ

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「両想いになったらさ、好きなんだからって見返りを求めるようになるじゃない。自分が想ってる分、相手にも想って欲しいって見返りが欲しくなる。それがさ、お互い、想いの比重が一緒ならいいけど、重くなっちゃうことだってあるよね。それを相手の所為にして、つまらないことで嫉妬したり、信じられなくなって、すれ違ったり、その結果別れたり…とかね」
「まあ、そういうこともあるだろうな」
「片想いなら、自分が一方的に想ってるだけだからさ。楽だなと思って」
不二はグラスに口をつけて、苦い笑みを浮かべた。
「恋に恋してる…なんて、柄じゃないけど、手塚に対してはそんな感じかな。片思いでいるほうが楽。無理矢理、手に入れても手塚の心は絶対手に入らないことが解ってるから」
誰も彼の心を手に入れることなど、出来はしないのだと思っていたから、安心して想っていられた。手塚の心が越前に奪われても、自分は想いを手塚に告げようとすらしようとしなかった。失って、それはただの身勝手な思い込みだったのだと気づかされて、一度、死んだのだこの恋は。
「…恋に恋してか…。俺は自分が手塚を好きなんだと気づいたときには絶望したよ」
からりとグラスの中の氷が揺れる。不二は瞬くと乾を見つめた。
「絶望なんて相当だね。…乾は何に絶望した訳?」
乾を不二は見つめた。
「惚れた相手には何をしたって適わないことに。思い続けたって、絶対に叶わないことに…ま、そんなことは最初から解ってた…ハズなんだけどな…」
「解るなぁ、それ。僕も同じ気持ちだったよ」
溶けて音を立てる氷塊。乾は苦笑を返す。
「何言ってるんだか。越前が現れるまで、手塚に一番近かったのはお前だろう?」
「…近くて凄く遠かったよ。…手塚はさ」
「不二がそう言うなら、俺と手塚の距離なんてここから、月ぐらいの距離になるな」
「なにそれ」
いまだに好きで、報われることがないと解っていてもそばにいたくて。例え、友人というポジションでもいいから手塚の近くにいたかった。…そんな恋があってもいいんじゃないかと思う。…そう思えるぐらいにこの恋は昇華してしまった。
「…でもまあ、昔よりは近くなった気がするよ」
「…そうだね。昔はもっと頑なで人を寄せ付けない感じだったもんね。手塚は」
「ああ」