【テニプリ】ヒカリノサキ
「聞いたさ。聞いたが「なんでもない」の一点張りで。しつこく問いただそうものなら、黙り込んで目も合わせてくれないし、手塚の様子はおかしいし。…それなら、もう一方の当事者の越前に何があったのか問いただそうと思ってたんだがな…急にドイツに行くことになって」
「…出来なかった訳か」
「そう言うこと」
乾の言葉に不二は眉を寄せた。
「…やっぱり、越前を殴ったのは手塚だってことか…」
どういう原因で手塚がリョーマを殴ったのかは解らないが、おおよその流れは掴めた。
「殴った?」
「知らないの?授賞式終わった後、越前、着替えもせずに手塚の控え室に向かって、帰ってきたと思ったら、越前、右頬を腫らしてるし。お陰で取材もお断りされたしね」
知り合いだと言うことで、控え室に入るとことは出来たものの、腫れた頬を冷やすこともせずにリョーマは放心していた。それにスタッフは当惑し、どうリョーマを扱ったらいいのか対応に苦慮していた。
「…まさかとは思うけど、もしかして、越前、手塚が引退すること知らなかったのかな?」
「まさか。手塚から俺は聞いてたのに、越前に話さないってことはないだろ」
「…そうだよね。テニスではライバルだけど、プライベートじゃ恋人だしね」
不二は溜息を吐く。二人の仲の良さと言ったら砂を吐くほど。二人の間に自分の知らないところで小さな喧嘩や諍いはあったかもしれないけれど、嫉ましいのを通り越して呆れるほどでだ。それが突然、こうなって、いちゃついてない方が、一緒にいないのが不自然に思えるのだから、二人に毒されてる自分達も重症なのかもしれない。
「…しかし、目に入れても痛くない可愛がり方をしてきた越前を手塚が殴るかな?」
「余程のことを越前にされたか、言われたかすれば手が出てもおかしくないでしょ。タカさんから、一度、手塚が越前に手を上げたことがあるって聞いたし…。それにさ、右利きの人間が殴ったんなら、腫れるのは左でしょ。右側が腫れてたんだから、あの場には手塚しかいなかった訳だし…あの越前が他のヤツにあっさり殴られる訳ないでしょ?」
「確かにな」
「…渾身って感じだったよ。腫れが引くのに一週間かかったみたいだから」
「そりゃ、災難だったな。…しかしまあ、手塚が手を上げるなんて余程だな。一体、越前は何をしでかしたんだか」
作品名:【テニプリ】ヒカリノサキ 作家名:冬故