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【テニプリ】ヒカリノサキ

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「あぁ。聞いてるぜ。…そういや、全英の後、越前に会ったんだが、アイツ、右頬、尋常じゃないぐらいに腫れててよ。…ワケ訊いても黙ってるし…越前の性格じゃ、敵も多いだろうが、やられて黙ってるタマじゃねぇしな…一体、誰にやられたんだか…まあ、本人が黙ってるんで、俺もとやかく言えなかったんだが、お前、何か訊いてねぇか?」
杯を重ね、顔を上げた跡部は眉を寄せた。手塚はぴたりと滑らかだった口を噤み、眉を上げている。それに何か手塚の新しい地雷を踏んだらしいと跡部は気づく。
(…そういや、手塚から越前の話が出てねぇな…)
会えば必ず話題はリョーマの話になるのだが、今日に限ってそれがない。
「…お前、越前と喧嘩でもしたのかよ?」
「……喧嘩?する訳ないだろう。…リョ…越前にはほとほと愛想が尽きただけだ」
淡々と感情の籠もらない言葉を口にして、手塚は杯を煽る。リョーマと言いかけて、越前と苗字を呼んだ手塚に違和感を覚え、跡部は眉間に皺を刻んだ。
「…まさか、喧嘩して別れ話してきたのかよ?」
「そうだな」
逡巡するでもなくそう言い、視線を伏せた手塚の表情を伺うがいつにもまして、感情が読めない。
(…別れただァ?絶対に有り得ねぇ。あのバカップルぶり散々見せつけられて来たこっちの身にもなれってんだ!絶対に何かありやがな…)
跡部は探るように口を開いた。
「別れ話が出た理由は何だ?」
「理由?そんなものはない」
「ねぇ訳ねぇだろーが!、越前がてめぇに隠れて浮気でもしてたのかよ。アーン?」
そんなことは万が一にも有り得ないのは知っていたが、まさかと言うこともある。手塚を見やれば、手塚は据わった眼差しを跡部へと向けた。
「…浮気の方がまだマシだ。…あの馬鹿、テニスを辞めると言ったんだ!」
手塚は声を荒げ、怒鳴ると苛立ち混じりの溜息を吐いた。
「テニスを辞める?…んなことは一言も言わなかったぜ」
頬を腫らしたリョーマはマスコミを完全にシャットアウトし、マネージャー以外の人間を部屋に入れようとはしなかった。跡部が部屋に入れたのはリョーマとは旧知の仲で公私共々、仲がいいからだが…。思い返せば、その時のリョーマは地の底まで落ち込んでいた。いつもの自信家ぷりと横柄な態度は影を潜め、ずっとどんよりと曇った空をぼーっと眺めていた。意識ここにあらずという感じだった。
「…そうか」