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【テニプリ】ヒカリノサキ

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手塚は立ち上がり、食器棚からコップを持って来ると、一升瓶を引き寄せた。




今季の全英のファイナルはテニスファンの間では既に伝説だ。同じ中学の先輩と後輩。二人とも注目のテニスプレイヤー。好カードの対戦に観戦チケットは即座に売り切れ、プレミアが付いた。ゲームは手塚有利に思えたが、互いにサービスは譲らず、タイブレークに縺れ込み、決着に5時間を要した。観客は固唾を飲み、試合の行方を見守った。
 そして、日が落ち、赤い夕陽がセンターコートを照らし始めた頃、長いラリーに終止符が打たる瞬間が来た。



「いい試合だったぜ」



あの瞬間を忘れないだろうと、跡部は思う。
「ああ。俺の中で一、二を争うぐらいいい試合だった。これで、悔いなくこの世界を去れると思った」
手塚はぐいっとコップの酒を煽った。
「…なのに、アイツは…」
手塚は息を吐くと瞼を伏せた。








 大観衆の喝采に包まれ、コート中央に歩み寄って来たリョーマは左手を差し出す。幸福感と体を未だに満たす興奮にその手を握り返すと、リョーマは手塚の手を掴み高く掲げ、肩を抱いた。汗で張り付くウェア越しに感じるリョーマの熱い体温に、リョーマもまた自分と同じ気持ちなのだと知り、手塚は笑みを浮かべ、その肩を抱き返した。
「…やっぱ、アンタ強いや。…でも、次は負けないよ」
負けてなお悔いなく笑んだリョーマに手塚は眩しそうに目を細めた。
「…リョーマ…」
その言葉に手塚は声を詰まらせた。公式でリョーマとテニスをするのは最初でこれが最後になる。そしてその試合は自分が望んだ最後を飾るに相応しい最高の試合になった。込み上げてくる想いを手塚はリョーマに伝えたくて抑えきれない感情を言葉に変えた。
「…俺はこの試合を最後に引退する。…最後にお前と試合が出来て、本当に良かった。お陰で最高のプレイが出来た。…有難う」
涙が溢れそうになるのを堪えて、万感の想いを込めて、手塚はリョーマの肩をきつく抱いた。この舞台にリョーマと二人で最高の瞬間、光のさきを共有できたことがこのうえない至福だった。
「…え?、それって…どういう…」