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【テニプリ】ヒカリノサキ

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手塚のこの場に似つかわしくない言葉に一瞬にして、リョーマの興奮は冷めていく。聞き返そうと顔を上げ離れてたところで、慌ただしく、授賞式が始まった。カップの授与が終わり、インタビューに移る。手塚はそのインタビューに応えながら、晴れやかな気持ちで、引退を告げた。その言葉を口にした手塚をリョーマは信じられないものを見るようにただ、呆然と見つめていた。
(…リョーマと最高にいい試合をする事が出来た。…リョーマはこの試合を踏み台にもっと上に行くことが出来るだろう。…テニスプレイヤーとしての俺の役目は終わった…)
試合中に軋み始めた痛みが体を苛むが慣れたものだ。一月もすれば、痛みは治るだろう。…既にこれからのことは考えている。パートナーとしてリョーマに寄り添い支えながら生きて行くつもりだ。リョーマの練習相手ぐらいにはなりたいから、無茶をしてまで、現役を続行する気はなかった。リョーマとテニスが出来れば、それが公式ではなく観客なくとも、それで自分は充分に幸福だ。リョーマとの会えない日々を重ねるうちに描くようにになった夢。その夢が今は手塚のすべてになっていた。それをリョーマも喜んでくれると思っていた。

 気づいていなかった。あまりの至福に酔いしれて。






「…引退なんて、嘘だよね?」


インタビューが終わり、ようやくマスコミから解放された手塚は控え室に入る。控え室にはリョーマがいて、その姿を目に留めて、手塚は口端を微かに上げたものの浮かない顔のリョーマのに眉を顰めた。
「嘘じゃない」
「…っ、何で?!」
驚愕に目を見開いたリョーマに手塚は口を開いた。
「…ずっと、…プロに…いや、お前と高架下で試合をした時から、決めていたことだ」
手塚はリョーマを見つめた。真っ直ぐに自分を見つめてくる手塚の視線にリョーマは不意を突かれたように視線を逸らし、押し黙る。それを怪訝そうに手塚は見つめた。
「…リョーマ?」
どうして、手塚にはリョーマがそんな顔をするのか解らない。
「…どうして、オレはまだ…」
もどかしげに口を開いて、弱々しげに自分を見つめてくるリョーマの表情は長年付き合ってきた中で初めて目にするプレイヤーでもない恋人でもない途方にくれた子供のような顔で…手塚は言葉もなくリョーマを見つめ返した。
(…リョーマ…?)