友達ごっこ (静雄の言い分)
それから,どんな仕事も俺には続かなかった。結局俺が落ち着いたのは借金取りの用心棒のような,暴力と切り離せない職だった。俺は暴力が嫌いだ。カッとなって壊してしまう物はあまりにも多い。それなのに結局俺はそれを仕事にしているのだ。俺の力は異常だ。俺は異常だった。
俺の力は、暴力だ。小学3年の時に自覚してからは、これでもひたすら力を抑え込もうとして生きてきたのだ。何度も激怒して、巨大すぎる力を振るって、すぐに、同級生は俺を怒らせないように気を使うようになった。みんな、俺を恐れていた。それに苛立つ事もあったけれど、俺はすぐにそれを受け入れた。俺は、一人でいい。一人でいれば誰かにキレる事はない。何かを壊したりしなくても済む。それでいいと思っていた。一人で誰にも迷惑をかけず静かに生きていけるなら、それでよかったのだ。
いつだって、日々の片隅に暴力が転がっていた。きっと、自分の力を抑えられず、または、抑える気のない人間は沢山存在していたのだ。俺は、そいつらが俺を邪魔しているのだと思っていた。俺は自暴気味に、我慢することをやめて、破壊の限りを尽くすようになった。そうすればいずれ、俺の望んだ平和は手に入ると思っていた。きっと誰もが俺を恐れ、俺に近づかなくなる。壊した物の事など考えなくなった。俺は悪くない。俺はだって静かに暮らしたいのだ。
俺は戦わなければならなかった。俺の噂を聞いて喧嘩を売ってくる奴は絶えなかった。俺は、襲ってくる相手をすべて叩きのめせば全てが片付くと無条件に思っていた。疑うことすらしなかった。
戦って戦っていつか戦わなくていい日がやってくる。その時やっと幸せになれると思っていた。人をつぶし合わせて上から楽しんでみている奴らがいる事なんか,考えた事すらなかった。
臨也のように,邪悪な好奇心で人を陥れる人間がいるなんて,その頃,俺は知らなかった。そういう奴にも,邪悪でない一面がある事を,俺は知らなかった。
臨也のせいで,俺はこの世の闇にほんの少しだけ触れ,ガキではいられなくなった。そうして,やっと臨也が好奇心と,純然たる悪意をもって災厄の種をまき散らし,それを愛などと呼ぶ外道なのだと認識した。
総括すれば,高校生活は,喧嘩三昧の日々だった。俺に踏み込もうとする奴はいなくて,俺は一人だった。
一人でないと感じた時もあった。その頃,俺は臨也を好きだった。臨也を友達のように思っていた。俺は新羅と違って臨也の下卑た本性をほとんど知らなかったけれど,すべてをさらけ出すだけが友達じゃない。臨也だって俺に友情のようなものを感じていたはずだ。あの時臨也は俺と真剣に向き合った。それをめちゃくちゃにしたのは俺だ。そうしなかったなら,臨也は今も優しい顔で俺を欺いていただろう。
作品名:友達ごっこ (静雄の言い分) 作家名:うまなみ