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ドリーム・パーク/1~オープン戦編~

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 バックスクリーンにでかでかと『K』が表示されながらもマウンド向かって駆け出したウソップに、スタンドがざわめいた。
「お、お前今の……」
「ああ、縦スライダーだ」
「投げられるなんて聞いてねえ!」
「横だろうが縦だろうがスライダーだろ」
「んなっ」
 思わず絶句したウソップを見てニヤニヤ笑い、「悪い、もうしねえ」と言いながらローが唇を舐めた。
「止められたからいいものの、ほんと……首振ってもいいからサインはちゃんとしようぜ」
「わるいわるい」
 そう言いながらもまったく悪びれていない口調にウソップは思わずローの顔を真正面から睨みつけたのだが、しかし、ローの視線はと言えば、一塁側、ストローハッツのベンチに注がれているのだった。その目が見つめているのは――キッド?
(もしかして……負けず嫌い、とか?)

 口調こそ悪びれてはいなかったが、以降ローが無茶をすることはなく、順調に打者を打ち取って6回表も無失点に終わった。



 その後6回の裏、7回の表と再び0が続き、1−0のままストローハッツはラッキーセブンを迎えた。
 グラウンドではサニー君が踊り、ドクトル・チョッパーはチアガールに囲まれながら恒例のバク転の前振りでぶんぶんと客席に手を振ったりしている。
「監督、ちょっといいスか……」
「ん?」
 ハハハと笑いながらマスコットたちを眺めていたシャンクスに声をかけたのは、サンジだった。
「あの、ゾロのことなんすけど」
 どういうわけかギリギリまで顔を近づけて小声で喋る。どうもサンジは入団当時からゾロとは仲が悪く、意識しすぎているのかそれとも単に気が合わないのか、それでいて試合後の練習はいつも(他のチームメイトもいるとは言え)一緒に行っているというのだから妙な関係だ。
「ゾロがどうした?」
 とりあえず、シャンクスも出来る限り声を潜めた。
「あのー……いや、アホな話なんすけど」
 『ドカベン』、読んだことあります?
「へ?」
 どれほど重要なことなのかと思えばあまりにも突拍子もない問いに、さすがのシャンクスも思わず声がひっくり返った。
「あ、あるけど……」
 バイブルだよね……。
「いやね、あの、岩鬼っているじゃないですか。悪球打ちの」
「いるね……」
「ゾロなんすけど、あいつ、俺がどんだけストライクゾーンに送球しても危なっかしく捕るか落とすかの癖に、なんか……送球が逸れたときは、よっぽどじゃない限り、捕っちまうんですよ」
 そう言われてみれば、ついさっきそんな場面があったばかりだ。スリラーバーク4番のホグバックの打球をサンジがあわやというところで捕球したものの、体勢が崩れ、送球は大きく逸れた。それを普段はザルと皆が認めるゾロが捕ったものだから、印象に残っている。
「それに……あいつ、打撃練習のときも、なんか……その、岩鬼っていうか」
「え、まさか」
「あいつ、すげえ方向音痴なんですよ」
「は?」
 また話が逸れた。
「いやもう、右を左と間違えるレベルなんです。ほんとです」
「えーと……」
「あいつの中で、ストライクゾーンが、こう……ずれてるんじゃねえかな……とか……ハハ……」
 サンジの口は、『ハ』の形をとったまま半笑いで固まった。
「……」
「……」
 グラウンドに響く間抜けな音楽。両チームファンから送られる、マスコットへの野次。
「いやっ、すんません、アホは俺っすね! うはは! じゃあ俺、あの、すんません!」
 ギャア! と叫びながらロッカールームに突っ込んだサンジを、チームメイトたちが、なんだァ? と見送った。
「おおいサンジ、次の打順お前からだぞ!」
「うるせえ! 便所!」



(いや、まさかなァ……)
 顔を真っ赤にしながら出てきたサンジはそのままバッターボックスに立ち、勢いだけのバッティングという感はあったが、内野に転がして塁に出た。続くエースもセンター前に転がし、1,2塁。
「なあベンちゃん」
「は?」
 キシリトールキャンディをガリガリ噛みながら、打席のフランキーにサインを出す。
「『ドカベン』、読んだことある?」
「はあ?」

(バントか……)
 今日のフランキーのこれまでの打席は、四球、レフトフライ、ヒット。続くバッターが前打席凡退のゾロであることを考えると、バントの指示は首を傾げるものである。
(ま、あの監督のことだから、なんか考えがあるんだろ)
 出会って数ヶ月だというのに自然とそう考えている自分に内心苦笑したが、それとは関係なしに、与えられた指示をこなすのがフランキーのプロ野球選手としての矜持だ。
 レイリーほどではないが、フランキーは案外バントが巧い。自分でも、もしかして4番より5番打者に向いているのではと思ったことすらある。危なげなく転がし、ランナーのサンジとエースは2,3塁へと進んだ。

 ベンチのシャンクスとバッターボックスのゾロとを交互に見交わし、サンジの心臓は今や飛び上がらんばかりにドクドクと高鳴っていた。
(監督まさか俺の言うこと信じたのか……いや、自分でもアホなこと言ったと思ってんだ。ねえねえ。ねえって、セオリー通りの策だろ)
 ワンナウト、2塁3塁。
 シャンクスから出たサインは――スクイズだ。
(でも監督、あいつにそんな器用な真似はできねえぜ。……そう思うとつくづく駄目な奴だな、ゾロ)
 三塁走者がそんなことを考えていると気付いているのかいないのか、いや、わかるはずはないのだが、それにしてもゾロの横顔は飄々としている。
(……で、しょっぱなから構えるし!)
 ゾロには、策略とかそういうものが一切ない。
 一死2、3塁と充分スクイズが、しかも走者は2人とも俊足と、ツーランスクイズすら有り得る状況なので、当然投手は外してくる。
(ですよねー……って、うおおおおおい!!!!!)
 ゾロは、まるで居合いのようにバットを振りかぶっていた。
 そして――