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ドリーム・パーク/1~オープン戦編~

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 その後の攻撃では、ルフィが三遊間を抜けるヒットで出塁。サンジは三振で凡退するも、続く3番エースがライトの頭上を越えあわや柵越えかと思われたが広い球場ということもあってかフェンスを直撃、しかし打者2人とも俊足ということもあり、ランナーは2,3塁へと駒を進めた。
「フランキーは敬遠ですかね」
 ベックマンの予想は当たり、フランキーはツースリーまでは粘ったが、敵バッテリーの方が根負けして満塁となった。
「問題は、あいつっすよ」
 自分が凡退となったことも手伝ってか、サンジが不機嫌そうに言った。事実、オープン戦が始まって以来のゾロの打率は.843と、クリンナップにはあるまじきレベルだ。
 案の定――
「おいクソッ! 打ちごろのど真ん中だったじゃねえか!」
「うるせえな、てめえも凡退だっただろうが!」
「あれは……」
 まあ、ゲッツーじゃなかっただけマシだよな、と頭上で苦笑混じりの観客たちの声が聞こえた。安普請が憎い。
「クソッ……次はレイリーさんだ、てめえがなんとか出てりゃ、逆転もできただろうに」
「だから、てめえに言われたかねえんだよ」
「お前ら! ギャアギャア騒いでるとまた罰金取るぞ!」
「「すんません!」」
 あわや取っ組み合いに発展しかねない2人を怒鳴りつけたベックマンだったが、実際、レイリーに適時打を望むのは少々厳しい。
(サンジは実戦での経験が足りない。ゾロは……どういうわけか当たらねえんだよなァ)
 無言で腕を組みながら、シャンクスは内心で唸った。しかし、この2人に光るものがあることは確かだ。ゾロの長打力は、広いイーストスタジアムでも2階席に余裕で届くほどのものだし、サンジは何より守備力と足があり、バッティングセンスも悪くはない。オープン戦期間中、実戦で使い続けることで何か得られれば儲けものとは思っていたが……。
(ま、そう甘くはないか)
 もとより長期戦を覚悟の上である。監督就任時、シャンクスが新球団社長のナミに出した条件のひとつに、『契約は少なくとも3年以上』というものがあった。保身目的ではなく、チームを育てるために。
 球団改革とは言うが、ストローハッツにしっかりと根付いた負け犬根性はそう簡単に払拭できるものではない。若手の大量起用によってチームの雰囲気は大きく変わったが、その分選手たちの経験値が足りない。
 少なくとも、就任1年目は、じっくりとチームを育てていくつもりだ。
(だからって、別に負けたいわけじゃねえんだが……)
 ツーツーからレイリーの打った打球は、一瞬二遊間を抜けるかと思われたが、セカンドのグラブに吸い込まれるようにしてその回は終わった。

 攻撃は点数につながらなかったが、2回以降キッドの投球は立ち上がりの乱調が嘘のように安定し、3振は5回までで4つ、ランナーを出しても野手陣が危なげなく抑え、スリラーバークのスコアボードには0が並んだ。
 しかし一方で、敵の先発ピッチャー、アブサロムは、オープン戦最終戦ということもありペナントレース時とほぼ変わらない出来で、ところどころで出塁することはできるものの得点にはつながらない。
 まさしく、0行進。初回の1点が実に悔やまれる展開である。
 5回攻撃、バッターは9番からだが、ここでシャンクスがキッドに代打を出した。
「よく投げたな。特に2回以降、力のある良い投球だった」
 ブルペンに自ら電話を繋ぐシャンクスの横で、肩を冷やすキッドを見下ろしながらベックマンが言った。
「……っス」



 5回の裏も0点に終わり、続く6回、予告されていた通り、出てきたのはキッドと同じく今年入団の左腕投手、ローだった。
「俺は打たせて取るタイプなんだ。ひとつ、よろしく頼む」
 そう言ってニヤリと笑う顔はいかにも食えない感じで、神経質なキッドとはまた別の意味で投手らしい奴だとサンジは内心で呟いた。
 トラファルガー・ロー。ストローハッツを逆指名し、入団後の記者会見では「そのー、なぜストローハッツに?」と質問した失礼な記者に、「俺はメジャー志向なんだ」と答えた、これまた失礼な奴。
 ルフィやウソップたちと同様インペルダウン住まいなので時折(と本人は思っているがかなり頻繁に)寮を訪れるサンジはそのたびに顔を見るのだが、いつ見てもやはり食えない表情をしている。
 なんというか――口ではストローハッツを馬鹿にしつつ、なんとなく、本心はそうでないような、そんな気がするのだ。あくまでサンジの私観だが。
(変な奴)
 プロの変化球投手にしても多い、7種という球種を聞いたとき、妙に納得したものだ。

(ローか……こいつは、キッドと違って滅茶苦茶制球良いんだよな)
 しかも球種も多い。プロにおいては球種が多ければ良いというものでもないのだが、ローの場合はストレート含め7種ある球種のどれもが、一定の基準に達している。中でもフォークはかなりのレベルだ。
 対する打者は、スリラーバークの2番、ヒルドン。昨年怪我で2軍落ちしていたこの選手とウソップは1度対戦したことがあるが、なんとなく読みきれないバッティングをするやつだった。
(しょっぱなからいきなり頭使うなァ……)
 そう心の中でぼやきつつも、実は結構楽しい。牽制やブロックで苦労しながらもウソップが少年野球時代から捕手を続けてきたのは、リードを考えるのが好きというのが大きな理由のひとつだ。
(まずは、アウトサイド低めのストレートで様子を見るか)
 ヒルドンの立ち位置はちょうど中ほど、あまり体格はないので、ここに来れば腕を伸ばしてもファールになる可能性が高い。
 ウソップのサインに、ローが頷いた。
 ほとんど構えた位置そのままに球が飛んでくる。ヒルドンは振らない。
「トライク!」
 まずは、ひとつ。
(次は変化球……ローならミスってど真ん中ってこともまずない)
 ストライクから打者の内に入るスライダー。ローのスライダーは、ストレートとの球速の落差が少ない。キッドの速球に慣れた目ならかなり誤魔化せるか。
 打球はヒルドンのバット根元に当たり、ファウルとなった。
 あっけなくツーストライクだ。
 ここでヒルドンの構えがクローズドスタンスに変わった。
(初球は見送ったが、案外打ち気なのか? ここで1回外しとくか……)
 内角で外れるストレート。が、マウンドで相変わらずのニヤニヤ笑いを浮かべながら、ローは首を横に振った。
(変化球がいいのか? ……じゃあもう1回スライダー? いけるか?)
 再び、横。
(あ、フォーク投げときたいとかか? まあ、ツーナッシングだしな……俺ならまずローのフォークでも止められるから、捕逸はない)
 横。
(どうしろってんだ……!?)
 こんなに首を振る投手だったっけ。
 思わずウソップが立ち上がろうとしたとき、ローが胸の前で自らサインを出し始めた。
(内、下、外れる……って、もう投球体制入ってる!? ああもう知るか!)
 慌ててサイン通りの位置にミットを構えるが、
(うおおおおおいど真ん中ァァァ!!!!)
 ――が。
「ットライク、バッターアウト!」
「ちょ……!」
 3球、3振。