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赤い糸

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行く場所は一つしかなかった。
寮の自室。
直井は制服、帽子を乱暴に脱ぎ捨て、ベッドに飛び込む。
そして、音無の腕の中でいた時以来、零さなかった涙を、零した。

扉から、ノックする音が聞こえた。
直井は聞こえなかった振りをする。
「直井」
扉越しのくぐもった声。
けれど、直井にはわかった。
音無だった。
どこで、直井の部屋を調べたのだろうか。
SSSのリーダーの女―ゆり―から聞いたのだろうか。
推測が頭を巡るが、どうでもよかった。
音無がここに来てくれた。
天使の言う事を聞かずにここに来てくれた。
それだけで直井の心にぽっと火が灯る。
しかし、すぐその火は消える。
どうせ、ただの責任感で、ここに来たのだろう。
直井は起き上がろうとした体を再び、ベッドに沈めた。
「直井、開けてくれ…」
「…」
直井は耳を塞ぎ、体を丸くした。
こうしていれば、こうして、扉を開けなければ、音無はやがて帰るだろう。
そして、また天使やSSSのメンバーと楽しそうに話すだろう。

「音無さんも僕の事、いらないくせに…」

小さな声で呟いた。
そして、改めて、気づいた。
直井は、音無に必要とされたかった。
否、愛されたかった。
けれど、音無は直井を見てくれない。
今までも、これから先も。
「神になりたいな…」
神になれば、このような感情からも開放されるだろう。
もう一度、行動を起こそう。
天使を幽閉して、SSSのメンバーを強制的に成仏させて、
そして、音無も…成仏させて、1人になろう。
いつだって、直井は1人だった。
ならば、これからも1人でいよう。
「もう茶番は終わりだ…」
直井は目を瞑った。
行動を起こす前にまずは眠りに付く事にした。
音無への感情をまどろみに消す為に。

目を開けると、部屋が闇に溶けていた。
直井は夜だと気づく。
眠りすぎて、鈍痛がする頭を軽く叩く。
喉が酷く渇いた。
放っておいても、死ぬ事はないが、それでも気分が悪くなりそうだった。
直井は再び、制服を身に纏い、自動販売機がある外に出ようと、扉を、開けた。
すると、いきなり直井は何かに抱きしめられた。
「え、や…」
ぱたんと扉が閉まる。
直井はバランスを崩す。
先ほどまで眠っていたベッドに再び、押しやられた。
何者かは直井を乱暴に抱きしめる。
直井は抵抗しようと集中する。
目が金色から赤へと変貌する。
直井の催眠術が発動しようとしていた。
「…んっ!!」
だが、発動しなかった。
唇を、塞がれた。
少し固い感触がしたが、相手が唇で塞いでいる事がわかった。
嫌だった。
音無以外としたくなかった。
直井は離れようとする。
だが、背中に回された腕が直井を解放してくれない。
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ。
直井は嫌悪感を抑え、催眠術を発動させようとする。
それに気づいた相手が直井の唇を解放した。
「くっ…、僕に…こんな真似をして…」
「直井…」
「えっ?」
聞きなれた声。
優しい声。
抱きしめられた時に気づくべきだった。
温かい感触に。
窓から月の光が差し込む。
そこに音無がいた。
「音無…さん…?」
「ごめん、直井…」
「あ、あの…なんで、ここに…?」
「直井が開けてくれるのを待っていた」
「あの時からですか!?」
音無は朝からずっと直井の部屋の前で直井が扉を開けてくれるのを待ち続けていた。
「そんな、どうして…」
「謝りたかった。今まで冷たくしていた事とか…、泣かせた事とか…」
「な、泣いていません!!」
直井は音無から目を逸らそうとする。
だが、逸らせなかった。
音無の目は優しくて、直井だけを見つめていた。
ずっと欲しかった、その温かい目で見つめられると、どうしても視線を動かせなかった。
「目、赤いぞ」
「これは催眠術を発動させようとしたからです!!」
「そうか…」
直井はじっと音無を見つめる。
そういえば、先ほど、音無にキスをされたのだ。
どうしてだろう?
直井は急速に顔が赤くなっていくのを感じた。
「直井、どうした?」
「お、音無さん、ど、どうして、僕に…その…き、きききき!!」
「落ち着け」
「音無さん、どうして、そんなに冷静なんですか!?」
「いや、結構、動揺している…俺、”これの人”じゃないってずっと否定していたんだけどな…」
音無は小さくため息を吐いた。
「音無さん、その僕は…」
「ごめんな、いきなりキスして…」
音無は直井の頭を撫ぜる。
そして、こつんと自分の額を直井の額に当てた。
「好きなんだ、直井が…」
「え?」
直井は唐突な告白に目を丸めた。
「ずっと好きなんだ。あの雨の日、直井を抱きしめてから」
「え、あ、え、えええっ!!」
「直井、大きな声を出すと…」
「あ、すみません…って、無理ですよ!!だって、僕、音無さんに嫌われていたんじゃ…」
「ごめん…嫌っていない」
音無は頭を下げた。
「直井の好意、嬉しかった。毎日、俺の後についてきてくれて、俺に触れてくれて」
「でも、貴方は…」
「俺、ノーマルだと思っていたから、男のお前を好きになるなんて、
間違いだと思って、必死に嫌われようと思った」
「あ、あの、僕は…」
「でも、男とか女とか関係ないよな。お前は直井。俺の大切な人だ」
「で、でも、天使とよく一緒に…」
「あ、あれは、奏は妹に何となくだけど似ているんだよ!!だから、つい…」
「…」
直井は音無の胸の中にもたれる。
「直井、大丈夫か!?」
「すみません…色々あって、混乱しています」
「そうか…そうだな」
「とりあえず、誤解、解きましょうか」
「誤解?」
音無が繰り返す。
「音無さん、腕、放してくれませんか?」
「駄目なのか?」
「少し、し辛いのと…傍で見られると恥ずかしいですから…」
「?」
音無はとりあえず、直井から腕を開放した。
直井は音無から少し離れて、制服を脱いだ。
「直井?」
音無は不思議そうに直井を見つめる。
直井はシャツを脱いだ。
途端、音無の目が限界まで見開いた。
「え、な、直井…だ、よな?」
「はい、僕です…」
直井は音無から視線を逸らす。
「ほ、本当に…直井…」
「触れてみますか…?」
直井の問いかけ。
音無はつばを飲む。
「触って…いいのか?」
「音無さん、信じてくれなさそうですし…」
「いや、そんな事は…」
「視線、硬直していますよ」
「うがっ!!」
「ふふ…」
直井は音無の手を掴み、そして、誘導する。
音無の手に感触が伝わる。

柔らかい。

胸の。

感触。

「直井、お前、女の子だったのか…」
「はい…」
「どうして…?」
直井は目を細めて、説明する。
生前、直井の父は有名な陶芸家であり、直井の双子の兄である健人は陶芸家の実力があった為、
優遇されたか、直井には無く、1人寂しい生活を送っていた。
その生活が激変したのは兄の死だった。
兄が死んだ事により、直井が兄、健人になり、直井の父が病に伏せるまで、
厳しい修行を積む羽目になったのだった。
男だと偽るようになったのは、健人に成りすます以前からだ。
父が女を嫌い、女である直井には男であるよう強制させたのだった。
「もうその父もいない。だから、偽る必要は無かったのですが…僕は女である自分が嫌いでしたから」
「だから、ここでも、男でいたのか…」
作品名:赤い糸 作家名:mil