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小説PSU EP1「還らざる半世紀の終りに」 第1章

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「……その近辺を探ってるみたいなんで、尾行して来いと言われたんだ。俺の知ってるのはそこまでだ。さぁ、こいつの縄も解いてくれ」
 三人は顔を見合わせた。
「なるほど。ボクと交戦した事が教団に伝わってなかったのは、だからなんだ」
 つまり、ダーククロウは"教団に所属する"のが目的ではない。何かの目的を"教団に所属する"事で成そうとしている……。イオリの参加する"組織活動"というのは、一体どのようなものなのだろうか。
「さ、全部喋ったぞ。縄をほどいてくれ」
 爪男がうるさく喚くので、ファビアは縄をほどいてやる。
「団長にお伝えください。ガーディアンズはあなたたちの思い通りにはならないと」
「へいへい。あばよ……うおっ!?」
 男たちは街に向かって去ってゆこうとした……その矢先。いきなり背後からの衝撃に爪男は吹き飛んで転倒した。
「……ボクをガキ扱いするな」
 オルハの飛び蹴りが炸裂していたのだった。
「お、大人気ない」
 ファビアが頭を抱えて呟いた。
「……返事は?」
 オルハが仁王立ちで爪男を睨み付ける。
「は、ハイぃ!?」
 爪男は事態をよく把握できないまま慌てて立ち上がり返事を返す。
「行ってよし!」
 オルハがびしっと街のほうを指すのに、爪男は驚いた顔のまま条件反射で走り出す。それを両手を腰に当てながらうむうむと頷いて、満足そうに見守っていた。
 その時。
 不意に、がさがさっ、と草をかき分ける音が響いた。
 まさか、新手か?
 慌てて三人は振り向く。
「よう、何か楽しそうだな」
 草むらをかきわけて出て来たのは、ランディだった。
「ランディ……ちょっと、何その傷」
 オルハが駆け寄る。彼は全身ぼろぼろだった。全身が自らの赤い血に染まっており、走ってきたせいか傷はまったく塞がってはいない。
「ヘマうっちまってね。それより、ヴァルの方がヤバい」
 ランディの左手に抱えられたヴァルキリーは、胸は自らの鮮血で赤く染まり顔は真っ青。呼吸する胸の上下は弱々しく、傷が深いのは明らかだった。
「これは……二人ともかなりひどい。……失われし力よ戻れ、ギ・レスタ!」
 ファビアのウォンドを中心に、光の輪が展開され二人を包み込んでゆく。ランディは傷が塞がっていくのを実感したのか、幾分顔色がよくなってゆく。
「ふぅ……助かる。すまねぇな」
「……二人とも、失血量が多すぎてテクニックでは完全に治せません。早く街に戻ってしかるべき治療を」
「そうだな……ヴァルの傷も浅くはないだろうし」
 ランディがヴァルキリーを抱えて歩き出そうとする。
「ちょっとちょっとランディ、けが人なんだから無理しないの」
 オルハが慌てて駆け寄って、上着の裾を掴みながら前に回り込む。
「ん? ああ、こんなのケガのうちに入らねぇよ」
「そんなわけないでしょ! 何その真っ赤な服! ここはボクらにまかせてよ!」
「悪いな」
 不意に、ランディの表情が厳しく変わる。真面目な顔で、彼はゆっくりと噛み絞めるように言葉を紡いだ。
「……同行していた俺の実力不足もあるんだ。後生だから、街まで運ばせてくれ」
「……」
 その言葉に、オルハは返す言葉が見つからない。一旦うつむいてから、顔を上げて何かを言おうとする。
 しかし、そのまま視線を落として、唇を噛んだ。
「オルハ……言いたい事は分かりますが、ここはとにかく街へ」
 促すファビアに、一同は頷いた。