トラブル・スクエア
その日の昼休み。いつもの場所で本を読んでいると、静雄がやってきて近くに寝そべった。その頬に絆創膏が貼ってあるのを見て、門田は声をかけてみることにした。
「どうした、それ?」
「……ちょっと切っただけだ。新羅に絆創膏貰った」
「また臨也との喧嘩か?」
「喧嘩じゃねぇ。あいつがちょっかい出してきてうるさいから殴ろうと思っただけ……」
静雄は寝そべりながら、唇を尖らせる。門田は笑って、その金髪の頭をぽんぽんと叩いた。
「そうか、そうだろうな」
「俺は喧嘩は嫌いだ」
おとなしく撫でられながら、静雄は呟く。なんだか落ち込んでいる。
もしかしたらまた何かを壊して怒られたのかもしれない。
軟らかな髪をぽんぽんと撫でていると、静雄は急に門田の膝に顔を伏せてきた。
「くそ……あいつのせいで……俺は」
「ん……」
傷ついてる。静雄が悲しんでいるのだと分かって、門田はそのまま膝を貸してやることにした。本を読むのに別に膝の上に誰かの頭があっても、そう邪魔にはならない。
慰めたり、励ましたりするのは苦手だけど、居場所になってあげるくらいなら自分にも出来る。そんなことを思いながら門田はチャイムが休みの間ずっと静雄に膝を貸し続けた。