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【テニプリ】Marking

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今まで付き合ってきた誰よりも手塚は面倒臭い上に、今まで付き合ってきた女共よりも手が掛かる。面倒を見てやっても見返りなどは当然ない。そんなもの、最初から期待などしていないけれど。
(…なんつーか、変わらないんだけどよ…)
基本的に手塚は他人に厳しく、自分に厳しい。そこは変わってない。違うのは恋人のリョーマに対する態度だ。リョーマに手塚は限りなく甘い。甘やかすのが、そして甘えるのが、手塚にとっての至福らしい。元から、自分の世界を持っている人間はその領域に他人が干渉してくるのを極端に嫌う。手塚はその典型だ。限られた、自分が気を許した者にしかそこに入ることを許さない。干渉しようものなら、返って来るのは容赦のない拒絶と排斥だ。限りなく狭いその領域に入ることを許されたのは、家族とリョーマ。そして何故か、自分…。人が一番無防備になるこの部屋、寝室にまで入ることを許しているのはリョーマと自分だけだ。最初は警戒して、威嚇していたクセに今や、無防備に寝入ってしまう程、跡部に手塚は無警戒だ。
(…前は本気で寄せ付けなかったクセに…越前を俺に盗られると本気で思ってやがったからな、手塚…)
偶然の出来事からリョーマに懐かれてしまい、それ以来、何かにつけ甘えてくるリョーマに悪い気がせず、つい構っていた。リョーマが自分以外の人間に懐くのを快く思ってなかった手塚には事あるごとに睨まれ、威嚇されたことを跡部は思い出す。
(…越前のヤツ、それを面白がってたよな…)
手塚が嫉妬するのが単純に嬉しかったのか、リョーマは手塚の目の前で、跡部にやたら過剰に愛想よく振る舞っていた。それが打算的なものだとは薄々気がついていたけれど、それが頑なな視野の恋と言うフィルターのかかっている手塚には解らない。お陰で何度となく手塚には当たられ、拗ねられ、突っかかれた気がする。それが、今の関係の延長線上にあるからか、手塚には遠慮がない。
(…越前もだけどよ、手塚も、万が一、俺様が変な気を起こしたら、どーすんのかね?)
手塚を襲おうとその気になれば、いつでも襲える。この状況はまさに上げ膳据え膳だと跡部は思う。
(…ってゆーか、それ以前か。俺様には越前も手塚も手間と面倒の掛かるペットみたいにしか思えねぇしな)
作品名:【テニプリ】Marking 作家名:冬故