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【テニプリ】Marking

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「…取り敢えず、マンション行くぜ」
「…うん」
リョーマは小さく頷いてまた溜息を吐いた。
「…オレ、別に怒ってないんだけどなぁ」
「手塚はお前が怒ってるなんて思ってねぇよ。勘違いが恥ずかしくって、お前に合わせる顔がないだけだ」
信号が青に変わり、跡部はアクセルを踏んだ。
「そうなの?」
「そうだろ。自分が付けたなんて微塵も思ってなかったからな」
「…そーかも。やってる最中、意識飛んじゃて、自分がしたことなんて、覚えてないし…」
「だろうな。酒、入っても酷いからな」
「え?!、そうなの?」
「知らねぇのかよ。アイツ飲むと絡むわ、延々と愚痴めいた惚気話を聞かされるわ、…付き合うこっちは大変だぜ」
跡部はげんなりした顔で昨夜の一連の出来事を思い出した。
「…そうなの?、国光さん、ザルじゃないの?」
「ザル?、アイツ、弱いぞ。飲むとすぐ酔うしな」
溜息を吐く跡部をリョーマはじーっと見やった。
「…何かさ、なんだかんだ言って、跡部さん、国光さんと仲良いよね」
リョーマは嫉妬混じりの溜息を吐く。
「オレ、国光さんが酔ってるとこなんか、見たことないよ」
唇を尖らせるリョーマに跡部は肩を竦めた。
「手塚はお前に対しては完璧主義者だからな。お前酔ってみっともなくなったとこ見せたくねぇんだろ」
「見せて欲しいよ。恋人だから。オレなんかいつも、国光さんにみっともないとこばっか見られてるしさ」
「一応、年上だしな。年下のお前に簡単に醜態曝すワケにゃいかねぇだろうが。…醜態見せて呆れられたら怖いって、前、手塚が言ってたぞ」
以前、手塚の部屋で二人で飲んだ夜、酔いの回った手塚が何か拍子か、そんな言葉を零した。先に好きになって、自分の出来得るかぎりの手を尽くして手に入れた相手だ。そんなリョーマを繋ぎ留めるためなら、何を犠牲にしたっていい。怖いのは、本当の自分を見せてリョーマが呆れて離れて行ってしまうこと。…だから、本当の自分は見せられない。リョーマには何をされても許しているくせに、素直になれないなんて、手塚は本当に臆病だ。
「…そんなこと言ってたの?そんなの、お互い様だよ。オレだって、国光さんに嫌われるのが一番怖いし…。オレ、国光さんなら何やっても許せるし、それを可愛いって思えるけどな」

「…そーかよ…」
作品名:【テニプリ】Marking 作家名:冬故