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【テニプリ】Marking

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「ニヤケるって…オレ、今、スゴイ幸せだから」
「そーかよ」
このまま当てられ放しでは敵わない。跡部は溜息をひとつ吐いた。







「フロリダ行のチケットだ。パスポートは持ったか?」
「持ってるよ。…チケット、サンキュ」
「どういたしまして」
パスポートと財布だけの他は身軽なリョーマを搭乗口まで見送る。帽子を目深に被ったリョーマを見やる。
「忘れものはねぇーだろうな?」
「ないよ。…ってゆーか、跡部さんさ」
「何だよ?」
「お母さんみたいだよね」
「アァン?!誰が、お母さんだ!…テメェみたいなデカイ息子産んだ覚えはねぇよ!…ってゆーか、産めねぇよ!」
跡部は眉間にみしりと皺刻み、リョーマを睨んだ。
「冗談じゃん」
「冗談でも気色悪いこと言うんじゃねぇよ!」
…ったく、母親だと?冗談じゃねぇ。これ以上、面倒見切れるか!…跡部は眉間に皺を寄せた。

「…6時58分、…フロリダ行御搭乗のお客様…」

出発を知らせるアナウンスにリョーマは肩を竦めた。
「もう時間か。…跡部さん、国光さんのこと、オレがいない間、よろしくね」
「…仕方ねぇな。手塚の面倒は見といてやるから、テメェはテメェのことに集中しな」
「サンキュ。やっぱ、アンタと仲良くしといて正解だったよ」
「…俺様は大迷惑だぜ」
「嘘ばっかり。頼られるの嫌いじゃないクセに」
「うるせーよ。さっさと行け。戻ったら首筋のキスマーク、マスコミに精々、見せつけてやるんだな」
「なんだ、気付いてたんだ?」
「…気付きたくなかったけどな」
「ま、こんなもので国光さんが安心出来るなら、いくらでも付けてもらって構わないんだけどね」
首筋に付けられた赤い跡を指で愛おしいそうに撫でるリョーマに跡部はもうどんな顔をすればいいのか解らず眉間を押さえた。
「…惚気なら余所にしてくれ…」
「いいじゃん。オレ達のこと一番知ってんの、アンタなんだから」
「…知りたかった訳じゃねーよ」
溜息交じりの跡部のぼやきにリョーマは笑うと、背を向け、一度振り返ると屈託のない無邪気な笑みを浮かべ、手を振り、ゲートへと向かい歩き始めた。帰国したときの世界が滅びたときのような顔とは雲泥の晴れやかなこの世の春を謳歌している顔だ。それを跡部は見送り、やれやれ、やっとやっかい事から開放されたかと肩を竦めた。

その肩を不意に叩かれ、跡部はびくりっと肩を震わせた。
作品名:【テニプリ】Marking 作家名:冬故