【テニプリ】Marking
「あ・と・べVv」
「ぬぁ!?ふ、不二…?!」
振り返れば、カメラバックを肩ににっこりと微笑む不二周助(…今はフリーのルポライターをしている…)。跡部は眉を引き攣らせた。
(…何で、不二がここに?まさか、情報が漏れてたのか?…否、そんな筈はねぇ…)
「何、跡部、誰か見送りに来たの?」
「…あぁ、…まぁな」
「ふぅん?、それって、越前でしょ?」
開眼して、ズバリ、言い当てられ、跡部は言葉に詰まり、ぬぅっと眉間に皺を寄せた。
「…あ、やっぱり、帰国してたんだ」
不二に隠し事は出来ない。跡部は開き直る。そもそも、この騒動の原因はにこやかに微笑む目の前の男の所為だ。
「…テメェに唆されて、冗談半分で手塚に電話した俺も馬鹿だったが、本当、テメェの所為で散々な目に遭ったぜ」
「一体、何があった訳?」
事の顛末を手短に話して聞かせる。不二の目がすぅっと細くなった。
「…チッ。上手く行かなかったか…」
やはり、リョーマと手塚の仲違いを狙っていたらしい。小声でそう呟き、小さく舌打ちした不二に跡部は頭痛を覚える。
(…まだ、手塚のこと、諦めてなかったのかよ…ι)
越前から不二は要注意人物だと耳にタコが出来る程、聞かされていたが、これでは本当に、安心して、越前は遠征には出掛けられまい。
(…手塚も性質の悪いのに惚れられたもんだな)
跡部は他人事のように思い、不二を見やる。不二がどす黒いオーラを放ち、凶悪な顔になったのは一瞬。いつもの微笑に戻った不二は小首を傾けた。
「…で、週刊誌が発売になったのは一昨日だったよね?…越前は昨日帰って来て今、帰ったの?」
「あぁ。…先に言っとくがこのことは黙ってろよ。これ以上の面倒は御免だぜ」
「…一応、可愛い後輩だしね。今回はここでやめとくよ。越前の記事、需要があるんだけどね。…やり過ぎて手塚に睨まれたくないし、……これ以上、愛が深まったら嫌だしね…」
「……そうしてくれ」
ラブラブバカップルの面倒を毎回見てやれる程、こちらも暇ではない。スポンサーとしてリョーマにはかなりの額を既に投資している。順調に上がってきたここで、コケてもらっては困る。不二もそれは望んではいまい。
「…跡部も苦労してるよね」
「…お前の所為でな」
「何で、僕の所為なのさ?」
リョーマと手塚の揉め事に八割方…九割は関与しているに違いない不二は素知らぬ顔でにっこりと微笑む。
作品名:【テニプリ】Marking 作家名:冬故