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Million Kisses

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「勿論です。ちょっと早く目が覚めただけです。総帥は?」怒ってるな…。

「薬飲ませて寝てます。」
「今日は休養のため休みになっていますのでゆっくり寝させてください。」起きなきゃ良いんだけど…。

「やっぱりおれも休みですか…。」
「あたりまえです。」問答無用に切り捨てられる。しくしく。

「お願いがあるんですが。」
「なんです?」

「昨日焼いたパンがあるので教会に持っていって欲しいんです。」
「お安い御用です。では1時間後に。」

一安心。あと1時間か起きるなよ。音を立てないように静かに準備。
時計を見ながら待つ時間の長いこと…。

ノックの音で静かにドアをあける。
「朝から疲れた顔していますねえ。」
「単に寝不足です。」
それより極力音立てないように動くほうが疲れる。

「総帥はお休みなんでしょう?」
「そうなんですが…。」
「とにかくこれはお預かりします。何かあったら連絡ください。」
「お願いします。」

そそくさ逃げられた。余計なことに巻き込まれたくないよなあ。無理も無い。
寝室に戻って椅子に座ってぼーっと顔を見ながらおきるまでもうやる事ないから安心して気が緩む。
薬がどのくらい効くかわからないのでそこが気になる。

夕方まで目が覚めないならそれはそれで良いんだけどまずありえないだろな。
リラックスできるように無駄と言いたいほど広い敷地に贅沢な緑に花。
…仕事しろよな…。

カーテンを開けて光をいれてみるがまだ起きない。薬の量から言うと不安になる。
顔見てると暗くなるので窓から外を見る。そのまま少し窓を開けて風を入れ椅子に戻るといつに間に起きていたのか目が合う。

声をかけてこなかったと言うことは…怒ってるな。
「おはよう。何か食べる?」頭押えながら
「うそつき…。」

「いやー嘘は言ってないし…水飲む?」
「ペテン師…。」お互い様かと。上半身起こしたので水を渡す。

「アスピリン飲む?」
「…くれ。」
「量少なめにしたのにそんなに痛いのか。何か合う薬ないかな。」

「もうきみの作った飲み物は飲まないぞ…。」
次は食べものに仕込むか…。

「寝ないのが悪い。どうせ今日は休みなんだから寝直せば。」その方が静かで良い。
「誰の所為で眠れなかったと思っている…。」

「余計なこと考えてるからだろう。単に疲れの所為だよ。」
「また駄目だったらどうにかしてくれるのか。」
と睨む。当分なくても一向に構わないけど。

「いいけど。それでも駄目ならどうする?」
今度は胸を押えてる。
「不吉なことを…。」また睨んでる。

「とりあえず食事は?胃の調子はどう?」
「食欲なんかあるか。」
「折角用意したのに。」
「食事よりここにきてくれ。」

言われる通りおとなしく座る。ほほに触れてくる。遠くを見るような目だ。なに隠してるのかな。

「眠れなかった本当の訳は?」

出来なかったんじゃなくてやる気なくした上に碌に眠れなかった理由を知りたい。
眉を顰めてる。

「今日からまともに寝れると言うなら聞かないけど。薬飲みたくないんだろ?それとも寝室分けたほうがいいのか?」苦笑しながら
「唐突だな…。」

「仕事に差し支えることを放っておけないだろ。」
「仕事が第一か…。」
「あなたの立場なら当然だ。」

「きみはわたしのためにここにいるんだろ。仕事のことよりわたしを見てくれ。」

大の大人が仕事しなくてどうするんだ?既に面倒みるのは仕事の範疇みたいなもの。
事務的になりすぎたか。

「夕べからずっと見てるぞ。大分顔色良くなったな。」
「…いつも見ていてくれ。」
「良くそんな疲れること言うな…。見てるだけじゃなく口出しするようになったらどうするんだ?」

「きみに束縛されたい。」
溜息つきたくなるようなことを…。

「束縛されるのもするのも嫌だ。」
「つれないな。」
「側にいる事と束縛することは違う。」

「わたしは構って欲しいぞ。」
と言うなりキスをされそのまま押し倒される。

「日の高いうちから何を…。」
「今すぐ確かめて安心したい。」
確かめるまでもなく元気そうだけど…。

「言っとくけどおれは昨日から碌に食べてないし寝てない。途中でお腹なるし寝るかも。」脱力してる。

「先に食事をしろと?」
「そう願いたいね。」

身を起こして溜息ついて無言でバスルームに向った。ききわけの良さが不気味だ。
バスルームにタオルと着替えを置いてキッチンに行く。
食事の支度してると不機嫌そうに髪を拭きながら出てきて冷蔵庫から冷えた水を出して飲んでる。

「軽いものでいい?」
「何でも。」
皿を置くと不機嫌そうなまま食べだす。大丈夫そうだな。

「きみも食べたまえ。」向かいに座って食べる。
「まだ食べるなら用意するけど。」

「わたしが食べたいのは違うものだ。」
「…胃が落ち着いてからにすれば?」

おれは食べものかよ。片付けてお茶を置くとその手を引いて膝の上に抱きかかえられ後ろから耳を噛まれる。
「ちょっと…。」
身じろぎしたぐらいじゃびくともしない。腕を抱きこんで肩に顎を乗せてくる。

「あのね…。」無言が怖いぞ。
「お茶飲みたいんだけど…。」
腕を緩めて奴に用意したカップを口の側まで持ってくる。

「あなたのために入れたのに。」
「我侭な…。」
違うだろ…。溜息ついて解放してくれる。

自分のカップを持って向いに座ってお茶飲んでると半眼で見てる。
「最初はともかく次の晩からはおれが気がつくまで意地になってたんじゃないのか?」無言でお茶飲んでる。
「起こしてくれれば良かったのに…。」

と言うと鼻で笑って
「どんな起こし方でも良かったのか?」
「こんな騒ぎになるぐらいならその方がましだよ。」
そんな眇めで見なくても…。

「仕事の事しか頭にないか…。」
「そうでもないけど…。」
気がつかなかったのは職務怠慢だとは思う。殺気を帯びてくれれば気がついたけど。

「眠れなかった理由は?言わない気?」
「きみ次第だ…。」
そんなに昼間からやりたいのか…。とは言え呑気に寝ていた負い目がある。

「いいよ。話してくれればね。」じっと見て
「このままここでやってもいいんだ。嫌だと言ってもはじめてしまえば拒否できないだろ。」
流されやすくて悪かったな…。ついでに言えばキッチンでやるのは嫌だぞ。食事作る気無くなる。

ひたっと目を合わせて
「なし崩しに誤魔化したい気持ちはわかるけど。同じ事繰り返さないだろうね。」

ここで引いては意味がない。向こうも言う気がないのか睨めっこになる。
ガキかよ…。困ったな…。

今のおれにわかることはおれがストレスの元になってるって事ぐらいだ。

「おれが鈍いのはわかってるだろ?そんなに言うのが嫌なのか?」
「言いたくない…。」
「おれに何して欲しい訳?」
じっと見るだけだ。お手上げ…。

「あなたまさかおれが気がつくまで言わない気?」
「暫く仕事行かなくていい。」

「暫くって何時まで?」
「わかってくれるまで。」
永遠に無理じゃないのか…。

「無茶を言う…。」
不安の原因をわかれと言われても。強引な上に人振り回してるくせに何でそんなに不安になるのかさっぱりわからない。
作品名:Million Kisses 作家名:ぼの