トラリトゥルリ
乱闘自体はものの5分もかからなかった。
気絶した仲間をほうほうの体で引きずって逃げ帰っていくのをのんびりと見送り、はた、と相手の一人からいただいたショートソードをどうしようか一瞬迷った。放っておくのも見つける人によっては危ないな、と鞘を探して収め、一息ついた所でパチパチパチ、とまばらな拍手に出迎えられる。
苦笑しながら振り返ると、段の上で薄く笑って拍手をくれるソルと、一生懸命拍手しながらぱあぁぁ~と花でも飛ばしそうなイキオイで感動しているらしい妖精さん。
「そーゆー構図は久し振りに見るな。地元近くじゃもうお前にケンカ売ろうなんて奴、いないから」
「・・・僕は穏便に済ませたいのに、どうしていつもこうなるんだろう・・・」
「…お前の穏便の定義って微妙だよな…」
しみじみ呟かれた小さな独り言に容赦なく返されて、トウヤは苦笑を浮かべた。
「結局手伝ってくれないし」
「いつ手貸すヒマがあったんだよ」
一応こっちに来ようとした奴は蹴り落としたぜ、とさらりと言ってソルはその場にしゃがみ込んだ。
「さてどうする?彼女を港の船まで送り届けるはいいが…、絶対誤解されるぜ、この図」
コツン、とつついた鳥かごは案外丈夫そうに見える。壊すにしろ手間が掛かりそうだし、下手な事をすればこの妖精の彼女を怖がらせてしまいかねないし。
かといってこのまま連れて行ったのでは、ただの誘拐犯の自首、みたいだし。妙な誤解は(解くのが面倒なので)回避したい。
・・・とかぐるぐる思っていたら。ゆっくりと近付いてきたトウヤが、満面の笑みを浮かべて、ん、と鍵の束を差し出してきた。
「・・・・・・。」
「・・・・・・?」
どうしたの?と動かないソルを訝しんで、顔を覗き込むように少しかがむ。
「・・・・・・お前コレ・・・」
「さっきの一人、足払って転ばせた時、この…シャランって音が聞こえたんだ。だから」
鍵持ってるのかなって思って。
・・・・・・。
合わないかな?なんて本当に噛み合わない事を聞いてくるので、取り合えずソルはそれ以上ツッこむのは止めて、鳥かごの鍵探しにその鍵束を受け取るべく手を伸ばした。