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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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「・・・・・・いくらなんでも遅すぎですね」
会場の戸締りを担っていた日本は時計を見上げて呟く。
会議が終わってから、時計の短針が3つも進んだのにまだアメリカは
鍵を返しに来ない。
既に日本以外のスタッフは撤収しており、会議場に残っているのは
護衛のSPが3人と日本の4人だけだった。
「イギリスとちょっと話をしたいんだぞ」
会議の始まる前に日本の元を訪れたアメリカはそう言って予備の部屋の鍵を
借りていった。
その際にきちんと鍵は返して下さいねと釘を刺したのだから
まさか返し忘れたということは無いだろう。
困りましたねと時計を見上げたまま日本は考え込む。
今日はイタリアやドイツとご飯を食べに行く約束をしていて、あと一時間ほどで
約束の時間は訪れてしまう。
約束の場所はここから遠くは無いので、ギリギリまで待っていても平気なのだが
先ほどから妙な胸騒ぎが心を波立たせている。
日本が気にかかっているのはアメリカと言うよりはイギリスの態度だ。
アメリカには詳しいことを告げなかったのだが、会議の後しばらくして
フランスに呼ばれた日本が彼の部屋を訪問した時イギリスは静かに涙を流していた。
いつものように喚きながらではなく、ポロポロとまるで童話の挿絵のように
綺麗に泣いていたのだ。

「あの、フランスさん」
「ああ。来てもらって悪いね日本」
居心地悪そうに声をかける日本にフランスが苦笑気味に笑いかけた。
ソファに座らされているイギリスはポロポロと零れる涙を拭いもせずに流し続けている。
既に相当泣いた後らしくイギリスのワイシャツは水に濡れ、肌が透けて見えていた。
ソファにも椅子にも腰掛けず、テーブルに凭れかかっていたフランスは
手に持っていた茶色の袋を日本に手渡す。
これは?と問いかける日本に細く息を吐きだしたフランスが答えた。
「俺と坊ちゃんでアメリカに夜食作ったから持っていこうと思ったんだけどさ
 あいつ、部屋の電話線すら抜いているみたいでぜんぜん連絡とれないのよ。
 昼のこともあったし、ここは日本に頼むのが正解かなって思って」
片目を瞑っておどけたような口調で話すフランスを日本は無言でじっと見つめた。
その視線の意味に気づかないわけではないフランスはふうとため息をついて
髪をかき上げる。
そしてちらりと視線をイギリスに投げかけて口を開いた。
「まあ何とかしたいって思わなくもないけど、この状態のイギリスに触れたら
 問答無用で叩きのめされるからね。お兄さん、痛い思いは好きじゃないし
 泣くことでこいつも感情処理をしているからね」
「感情処理ですか」
「そう。泣くのって結構すっきりするでしょ。だからこいつは色々溜まり込んで
 爆発しそうになるとボロボロ泣くのよ。それでリセットする」
一種の自浄作用だねと言いきって、フランスは軽く微笑んだ。
そうなのですかと不承不承ながらも日本は頷く。
フランスがここまではっきりと言うのならばそうなのだろう。
しかしそこには見えない絆があった。
当人たちに言わせれば、それは腐れ縁だとかそもそも絆などないと言われてしまうが
たしかにこれは「絆」だ。
(御二人が無自覚だからこそ、アメリカさんはさらに嫉妬してしまうんでしょうね)
会議の最中、大声を出して中断させた青年のことを思い返す。
あのときアメリカはとても苛立っていて、その苛立ちを上手く処理することができず
二人にぶつけた。
このままではいけないと咄嗟に会議を中断し、冷却期間を設けたつもりだったが
休憩明けに少し遅れて戻ってきたアメリカは目元を真っ赤に腫らして
痛々しいほど普通の自分を取り繕っていた。
休憩時間の間にアメリカとイギリスの間で何が起こったのか日本は知らない。
けれどあの人に弱みを晒すのが嫌いなアメリカが目を泣き腫らすほどの出来事が
二人の間にあったのだ。
胸の奥からこみ上げる嫌な予感を押し殺して日本はわかりましたと受け取った
茶袋をしっかり抱え直した。
イギリスのことはフランスに任せておけば大丈夫なのだろうと思う。
それならば自分は何かを抱え込んでしまっているアメリカの元に行けばいい。
元々、フランスに頼まれなくても日本はアメリカの部屋を訪れようと思っていた。
アメリカは我儘が多いし、日本のことを財布か何かと勘違いしているのではないかと
腹を立てることも少なからずあったが、それでも無邪気に懐いてくる彼を
手ひどく突き放したりはできなかった。
(息子というよりは孫みたいなものですかね)
さすがに目に入れても痛くは無いというほどではないが自分がイギリスに
負けず劣らずアメリカを甘やかしている事実に思い当たり、そっと溜息をついた。
そしてフランスの部屋を辞して、日本はフロアの端にあるアメリカへの部屋へ向かった。