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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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(あのとき、アメリカさんはイギリスさんのことを愛しているとおっしゃっていました)

日本が考えていたよりもすんなり部屋に招き入れてくれたアメリカは
フランスとイギリスからの差し入れを食べた後、イギリスが泣いたということを
日本が伝えると一瞬だけ目を見張ったがすぐに彼らしい態度を取り繕い
煙に巻こうとした。
しかしイギリスのあの泣き方を見た後ではごまかされるわけにはいかず
結果として日本はアメリカの隠していた想いを暴いてしまった。
アメリカはその想いを誰にも告げるつもりは無く、もちろんイギリスにもだ
ずっと抱え込んでいくつもりだったのだろう。
愛しているからいいんだと告げたアメリカの表情は諦観に満ちていて
未来に希望を抱き邁進していく超大国アメリカの顔ではなかった。
国ではなく、ただの青年だった。
好きな人の幸せを願う、どこにでもいる19歳の青年。
日本が遠く昔に置き去りにしてきてしまった懐かしい感情をアメリカは持っていた。
(だから、アメリカさんはイギリスさんを本質的に傷つけようとは思わない)
素直になれない態度がイギリスを傷つけることがあっても、それは傷つけようと思って
傷つけたわけではない。
もちろん、傷つけたことは許容できることではない。
だが、アメリカの態度の裏には押し隠した愛情がある。
(イギリスさんは―――――)
アメリカの部屋を出た後、空になったポトフの容器を返しに行こうとした日本は
廊下でイギリスと出会ったのだ。
目を真っ赤に充血させたイギリスは「さっきは格好悪いところ見せたな」と
すまなそうに謝ってきた。
そんなことはないですと日本は首を振り、イギリスにアメリカがサンドイッチを
食べたことを伝えた。
そのときイギリスは浮かべていた微笑を消し去り、瞳に凍てついた光を浮かべたのだ。
それはまるで触れられたくない傷に触れられたときの反応のようで。
とてもアメリカに対する態度とは思えなかった。
そしてそのままイギリスは何も口にすることなく、自室に帰って行った。
容器を返す際にさりげなくフランスにイギリスの様子を尋ねてみたが
なんらおかしい様子はなかったと返され、思わず日本は黙り込んでしまった。
思えば、そのときから何か嫌な予感がしていたのだ。
だが、今日の会議でのイギリスを見た限りでは特に変なところは
見受けられなかったように思えた。
フランスが言っていた通り、泣いてリセットできたのだと日本は思っていた。
自分の予感はただの杞憂なのだと安堵した。
しかしそれが間違いだったとしたら?
フランスは泣くことによって、爆発しそうな感情にリセットをかけると言っていた。
けれどもしその感情がリセットしきれず、少しずつ積っていたとしたら。
「―――――まずい、ですね」
呟いて、日本は席を立った。
もしも何かがあったとして、その状況が続いているのならば恐らく携帯は通じない。
ならば直接彼らを訪れるしかない。
控室を出て、アメリカに貸した予備の部屋へと日本は向かった。
これが本当にただの杞憂ならばそれでいい。
長いこと部屋を借りていたので心配になって来てしまいましたと言えば
怒りはしないだろう。
けれど、もしも、もしも二人の間に何かが起こっていたとしたら・・・
膨れ上がる嫌な想像を蹴散らすように日本は足早に向かう。
誰もいない廊下はしん、と静まり返っている。
その静けさにどことなくうすら寒いものを感じ、足をさらに速める。
大会議場の二つ隣の部屋。
普段は予備のプロジェクターなどを置いている部屋の前で日本は立ち止った。
扉を叩く前に気配を探って思わず眉間に皺を寄せる。
部屋の中に二つあるはずの気配が一つしかない。
読み違えたのかと思ったが、話し声などは聞こえず、探り直しても
やはり一人分しかいない。
覚悟を決めて、日本は堅牢な扉をノックした。
「アメリカさん、イギリスさん。お取り込みの最中、申し訳ありません。
 日本ですが、入ってもよろしいですか?」
トントン、とノックは二つ。
彼らに聞こえるようにやや声を張り上げて呼び掛けたが返事は無い。
しばしそのまま応答を待ったが、中で人が動いている気配も感じられない。
ますます不安が募り、今度はノックも少々荒目に、声はほとんど叫ぶように
中の二人に呼びかけた。
「アメリカさん、イギリスさん!日本です!お取り込みの最中、申し訳ありません。
 中に入ってもいいですか?」
これだけ荒々しく叩き、声を上げても何ら返答は無い。
覚悟を決めたように日本は生唾を飲み込み、ノブに手を掛ける。
勝手に入室して申し訳ありませんと心の中で謝りながら、ドアを押し開いた日本は
扉の向こうの光景に息をのんだ。