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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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「アメリカさん!?」
悲鳴を上げ日本はアメリカに駆け寄り、彼の傍に膝着く。
正座を崩して前倒しにしたような格好で床にうずくまっていたアメリカは
日本に揺さぶられて、ゆっくりと顔を起こした。
綺麗に澄んでいたオーシャンブルーは輝きを失い、淀みともいえる何かが
瞳をくすませている。
「日本・・・?」
幼子のような頼りない声が日本の鼓膜を震わせる。
揺れていた視線がはっきりと日本を捉え、アメリカはふわりと微笑んだ。
警戒心など無いまっさらな笑顔は逆に不安を呼び起こす。
その不安を悟られないように大丈夫ですか?と問いかけるとアメリカはこくりと頷いた。
「俺は平気だよ。ただちょっと探し物をしていてね」
「・・・そうですか。探し物は見つかりましたか?」
「うん。見つかったから平気だよ。長い間、部屋を借りていて悪かったね」
「いいえ。アメリカさん」
「ん?なんだい?」
躊躇いながら名を呼ぶ。
身を完全に起こしたアメリカは床にぺたりと座り込んだまま日本を見上げた。
日本は完全には座り込んでいないので、アメリカよりも少し視線が高い。
くすんだブルーを見下ろし、質問を投げかける。
「イギリスさんはどうしたのですか?」
「・・・用があるって帰っちゃったんだぞ」
「それは本当ですか?」
「本当だよ。ヒーローが嘘をつくわけがないだろ」
日本にしては強い口調での質問にもアメリカは微笑んで胸を張る。
その態度に疑う余地など欠片も無かった。
本当にイギリスは用事があって帰ってしまい、残されたアメリカは探し物をしていた。
普段の日本ならば信じ込んでいただろう。
けれど、胸の中に沈めておいた予感が騒いでいる。
このまま、彼の言葉を信じてはいけない。
アメリカに見えないようにわずかに斜め下を向いて息をつく。
アメリカは何かを隠している。
隠している何かを暴き立てるのはよくないことかもしれない。
視線を戻して、空虚感の漂うブルーを見据える。
だけど、「日本」ではなくただの友人としてこんな瞳をしている友を
放っておくことなどできない。
覚悟を決めて日本は彼の名を呼んだ。
「アメリカさん」
びくりと身体が震える。
瞬きを繰り返すたびにくすんでいたブルーに徐々に明度が戻っていく。
口唇を引き結んで、何かに耐えているアメリカにもう一度呼び掛ける。
アメリカさん。
強要するのではなく安堵させるように。
日本。
零れた小さな声を日本は聞き逃さなかった。
はい、としっかり答える。
それに柔らかく微笑んでアメリカは口を開く。
「イギリスが俺のこと、嫌いだって」
叱られた子供が罪を告白するような声音で告げられた台詞は
到底信じられないものだった。
誰が、誰を、嫌いだって?
うまく言葉を理解できない様子の日本にアメリカは穏やか表情を向けた。
諦観と憂愁を含んだ胸を突く顔。
初めて見たものではない。
イギリスを愛しているんだと告げたときと同じ表情で正反対の意味の言葉を
アメリカは紡いだ。
「イギリスさんがおっしゃったのですか」
「うん。弟じゃない俺なんて・・・・・・」
その先は掠れて言葉にならなかった。
アメリカは泣かなかった。
今にも泣きだしそうに瞳いっぱいに水を湛えながらも、その水は零れ落ちない。
「本当に、イギリスさんが?」
yesとアメリカは頷いて、続ける。
あれは彼の本心だ。ずっと隠していた本心なのだと。
「・・・それでね、俺も言ったんだ。キミのことが大っ嫌いでうっとおしかったから
 独立したんだって」
「どうして・・・」
「頭に血が昇ったからかな。イギリスは泣かなかったよ。俺が本心からそう思っていて
 やっとそのことを言ったなってかんじだった」
彼はね、どんなに言葉を尽くしても、俺のことを信じたりはしないんだ。
そう付け加えてアメリカは口端を持ち上げた。
その顔を呆然と日本は見詰めた。
アメリカに何かを言おうとし、言葉を探すが上手い言葉が見つからない。
結局ありきたりな台詞を口にした。
「・・・・・・辛いなら、泣いても良いんですよ」
「泣けないよ日本。辛いのは俺じゃない。イギリスなんだ。
 それにヒーローは泣かないんだぞ。泣いていたら人助けはできないからね」
「アメリカさん・・・っ!」
もう、駄目だった。
ぽろりと日本の目から涙が零れる。
一度、零れてしまった涙は戻らず、床に点々と涙が丸く染みを作った。
「どうしてキミが泣くんだい?ねえ日本」
不思議そうに尋ねるアメリカに首を振った。
あまりにも悲しすぎた。
イギリスの言葉が本心からの言葉であるとは思えない。
彼もまた度重なるすれ違いに心が傷つき、疲れ果てていた。
その心にアメリカの存在は劇薬だったのだろう。
だから彼を否定するような言葉を投げつけた。
けれども、必死に積み上げてきた自分を否定されたアメリカは
どうすればいいのだろうか。
弟としてのアメリカしかいらないと。
今のお前は大嫌いだと積み上げてきた自分を踏み躙られたアメリカは
泣くことすらできない。
踏み躙られてぐちゃぐちゃになってしまった心を守るように微笑むことしかできない。
「・・・アメリカさん。まだ、イギリスさんのことはお好きなんですか?」
絞り出すように投げかけられた問いにアメリカはきょとんとした表情を返す。
それから質問の意味を理解したのかああと納得がいったかのように頷いた。
「当たり前じゃないか。俺は好きだよ。愛している」
聖母のように微笑んだアメリカをたまらず日本は抱きしめた。
そのまま涙を零す日本の背中をアメリカはゆっくりと撫でる。
慈愛に満ちた母のような仕草で。何度も、何度も繰り返し撫でた。
「俺の代わりに泣いてくれてありがとう日本。キミのような人が友達で良かった」
声音までもが優しさに溢れていて、友の為に何もできない自分を
日本は何度も何度も心の中で詰り続けた。