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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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「うん、久しぶり」
とりあえず答えたといった感じの返事を返したカナダはおっとりと笑う。
歯切れの悪い答えにどうしたんだい兄弟?とアメリカは首をかしげた。
アメリカに促されてもカナダはううんと唸るだけで用事を告げようとしない。
カナダはのんびりやだから時間がかかるかもしれないなと考え、とりあえずソファーに
座るように告げ、珈琲を淹れにシンクに向かう。
普段は部下が珈琲を持ってきてくれるのだが、イギリスやカナダといったアメリカと
親しい間柄が訪ねてきたときにはアメリカ手ずから珈琲を淹れることにしている。
俺に珈琲を淹れさせるなんてキミかイギリスぐらいなんだぞと珈琲を置きながら
おどけてもカナダは顔を顰めて目の前に置かれた珈琲に手を伸ばしもしない。
よくよく見てみれば、いつも連れて歩いている白クマの・・・クマ五郎?とやらの
姿が見当たらない。
クマを連れてきていないということは国に関わる話でなおかつアメリカに持ちかけるのが
難しい話ということなのだろうか。
進行中のプロジェクトで何かあったのかと尋ねようかと思案した矢先
カナダが勢いよく俯かせたり、傾かせたりしていた顔をアメリカに向けた。
らしくないきりっとした真面目な面持ちに自然と背筋が伸びる。
「ねえアメリカ」
「なんだい?」
あえて空気を読まずに明るく返す。
張り詰めた緊迫を齎す雰囲気は嫌いだ。
相手がカナダならば尚更。
二人の間に緊迫した空気が漂うとあのときを思い出す。
兄弟で分かたれたあの日を。
けれど、カナダは穏やかに微笑むはずの顔を引き締めて口を開いた。
「今からキミにとって、とても辛いことを言うよ」
「ずいぶんと穏やかな言い方じゃないね」
肩を竦める。
小言はイギリスだけでうんざりだよと辟易したように付け加えるがカナダは笑わない。
笑ってくれよ兄弟。
祈るような気持ちで笑顔を保つ。
カナダの言い方でわかってしまった。
カナダが今から話すことは仕事ではなくプライベートに関わることだ。
しかもごく親しい人に関する。
となれば、誰のことかだなんて言われなくてもわかる。
彼のことに口出されて笑っていられるほど今のアメリカは強くない。
けれど、嫌だと逃げを打ちそうになる心を抑え込んでカナダの言葉を待つ。
ヒーローは逃げない。どんな困難にも立ち向かっていくんだと心に刻んで。
「イギリスさんのことは諦めた方が良い」
きっぱりとカナダは言い放つ。
告げられた瞬間は怒りも悲しみもわかなかった。
ああそう、キミはそう思ったんだ。そのくらいにしか感情が動かなかった。
それからじわじわと怒りとも悲しみともつかない感情が込み上げてくる。
諦めて、どうにかなるならとっくにそうしている。
百数十年前に想いを自覚したときにちっとも悩まなかったわけではない。
悩んで苦しんでもがいて。
でも仕方なかった。

(俺はイギリスしか愛せない。あの日、イギリスを選んだときから決まっていたんだ)

泣いていた可哀想な人をアメリカは選んでしまった。
同情のような想いは慕情に。慕情は愛情に。
あの頃から脈々と続いている想いを諦めることなどできない。
イギリスに大嫌いと言われても、弟じゃないお前など要らないと宣言されても
愛おしく思う気持ちは薄れない。
今だって、イギリスを思えば胸が温かくなる。
顔が綻ぶ。
そんな素敵な感情を捨てられないよ、とアメリカは言った。
カナダはひゅっと息をのみ込んで何で?と小さな声で呟く。
「俺は、イギリスが好きなんだ」
アメリカの答えにわからないと言わんばかりに首を横に緩く振って
それからねめつける様にじっとアメリカを見た。
穏やかな気性のカナダにそんなふうに見られると思っていなかったアメリカは
驚いて僅かに目を見張る。
カナダはぐっと堪えるように口唇を噛んでから、鋭い声を放った。
「好きだって言っても、キミはこんなにボロボロじゃないか!」
「俺はヒーローだよ。カナダ。どこもおかしいところなんて・・・」
「気づかないと思ったの!?僕だけじゃない!キミの上司だって部下だって
 日本さんやフランスさんだって気づいているんだよ!!」
ダンッと両手でテーブルを叩きつけてカナダは叫ぶ。
声を荒げ机を叩いたカナダよりもその挙げられた名前にアメリカは驚いた。
上司や部下はまだわかる。
ここのところ執務室に籠りきりで仕事をしているとはいえ、顔を合わせない日は
無いのだから。
だが日本やフランスといった面々は顔を合わせてすらいない。
日本と最後に会ったのは一か月前の上司と同席しての打ち合わせだったから
個人的に話をしていないし、フランスと会ったのはあの世界会議のときだけだ。
訝しげにカナダを見返せば仕方ないなと言わんばかりに大きくため息をつかれた。
「書類仕事が大嫌いなキミが外交の場にもろくに現れず、執務室に籠っていると知れば
 誰だってわかるよ。・・・キミとイギリスさんのことに気づいている人は」
「・・・他に気づいている人はいるのかい?」
「いないよ。皆、キミが貯め過ぎた書類仕事に追われているって思っている」
「よかった。あまり人に知られたくないからね」
否定することを諦めてアメリカはソファーに深く身を預けた。
身体を真っ直ぐ保っておくというのは案外体力のいることで今はそんな些細なことも
アメリカには難しい。
人の前で弱みを晒すことなどしたくはなかったが、他ならぬカナダの前だということが
アメリカの意地を解かしていく。
「ご飯、食べてる?」
「ハンバーガーは食べてないなあ」
「チキンスープは?」
「病人食は嫌いなんだぞ」
「もう。きちんと答えてよアメリカ!」
拗ねたように怒るカナダをDDDとアメリカは笑い飛ばした。