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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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「まさか何も食べていないなんてことないよね?」
「そんなことはないんだぞ。きちんと食べているさ」
笑ったまま答えるアメリカの心を見透かすかのようにじっとカナダは見つめてくる。
カナダはおっとりしていて存在感が薄いだなんて言われているけども
その存在感の薄さを生かして誰よりも状況把握が上手いのもカナダだった。
薄っぺらい演技や隠した下心などはすぐに見抜いてしまう。
だからアメリカは嘘と本当を織り交ぜて話している。
ハンバーガーを食べていないのは本当。
チキンスープが病人食っぽいからあまり好きではないのも本当。
きちんと食べているのは嘘半分、本当が半分。
食べようとはしている。
ただ身体が受け付けないだけだ。
「・・・キミの言葉を信じるけど、無理はしたら駄目だよ」
「ヒーローは多少の無茶をしてこそ活躍できるんだぞ」
「アメリカ」
ぴしゃと窘めるような言い方は少しだけイギリスに似ていて悲しい気持ちになった。
イギリスが小さなアメリカのことを叱るときによくこんな声を出していた。
怒っているのだけど、愛情が隠しきれない、怖くて優しい声。
すぐに帰ってしまうイギリスを引き留めたくて、悪戯をしたアメリカを
イギリスは「アメリカ」と名前を呼んで窘めていた。
心細いのはわかる。俺もよく経験していたからと優しく笑って
泣きじゃくるアメリカを慰めてくれた。
「アメリカ」
再び呼ばれて少し俯かせていた顔を上げる。
ふわりとした日本の綿菓子みたいな笑顔。
「隣に来てよ」
「どうしたんだい?いきなり」
「いいから」
カナダにしてはかなり強引な物言いで呼び寄せる。
むうと口を尖らせながらも向かい側に座っていたアメリカはどすんと勢いよく
カナダの隣に腰かけた。
振動で身体がぐらぐら揺れてもカナダは穏やかに笑ったまま身体をアメリカの方へ捩る。
そして口を尖らせているアメリカを胸の中に抱き寄せた。
「カナダ!?」
「ヒーローだって疲れるんだよ、アメリカ」
我儘な子供に言い聞かせるような台詞にアメリカは口唇を噛んだ。
疲れてなんか無いよという言葉は笑って黙殺される。
まるで日本みたいだと思った。
二か月前、日本もこうしてアメリカを抱きしめてくれた。
イギリスにいらないと言われて、ぐちゃぐちゃに踏み躙られた想いを抱え込んで
しゃがみ込んでいたアメリカを優しく包んでくれた。
細いと思っていた腕はイギリスぐらいしっかりしていて、顔を寄せた胸板は
イギリスよりも少しだけ薄かった。
そんなところでもイギリスを想ってしまうアメリカの代わりに涙さえ零してくれた。
日本の泣き方は胸をぎゅっと締め付けられるような切ない大人の泣き方で
アメリカの辛い気持ちを少しだけ攫っていってくれた。
日本がアメリカのことをどう思っているかわからないけど、少なくともアメリカは
日本が友達で良かったと思う。
そして今はカナダが兄弟であることを心から良かったと思っている。
「カナダ」
「何、アメリカ」
ごくごく穏やかにカナダは応じる。
あのね、と小さな頃のように呟いてからアメリカは言葉を続けた。
「フランスが昔言っていたよね。『愛はこみ上げてくるものだ。理由など要らない。
 その人を想うだけでこみ上げてくる熱情。愛は本能だ』って。俺がイギリスを好き
 いや、愛しているのは本能なんだよ。だから俺は諦めることなんてできない」
カナダの胸をぐいと押して身体を離したアメリカは大輪のひまわりのような
鮮やかな笑顔を浮かべる。
イギリスのことを想うだけで零れてしまう笑顔はその彼にいらないと言われた今でも
損なわれることは無い。
大好きなハンバーガーをお腹一杯に食べているときの幸福感すらイギリスを想う時の
幸福感には勝てない。
だから食べられなくともそのことにストレスを感じても、日々を何とか暮らしていける。
アメリカにとっての一番の恐怖はイギリスを想うことを止めること。
ただ、それだけが怖い。
「キミがイギリスさんを好きでいるのは本能だとしたら仕方ないことなのかな」
「うん。仕方ないことなんだよ。俺がイギリスを好きなのはさ」
はにかむようにアメリカは微笑む。
わかってもらえるとは思っていない。
そもそも男が男を好きになること自体が既にイレギュラーなことだ。
その点を鑑みると日本もカナダもよく否定しないでいてくれるなと思う。
否定しないで、さらにアメリカのことを心配してくれる二人の存在が
どれほど支えになっていることか。
言葉にしたことは無いけれど、深く感謝をしている。
「キミは昔からイギリスさん大好きだったよね」
「うん。好きだったよ。ずっと昔から」
アメリカを作ったのはイギリスだ。
アメリカの兄になってからは忙しい日々の合間を縫って海を越えて会いに来てくれた。
来るたびにたくさんのお土産を持ってきてくれて、いろんな知識を教えてくれた。
そんなイギリスを愛するようになったのは至極当然のことに思えた。
「・・・・・・それは独立する前からなの?」
「そうだよ。彼の後ろをついて回る小さな頃から好きだった。愛していることに
 気づいたのはフランスに恋と愛の違いを聞いてからだけどね」
あの頃は兄に抱くとは思えない膨らみ過ぎた想いに苦しんでいた。
イギリスのことを考えるだけで胸が熱く苦しくなる。
彼の傍に居たいのに、居ると自分ではなくなってしまう。
そんな途方も無い感情にぐらぐらと揺らされて、イギリスを避けた時期もあった。
結局それはそう長く続かなかったのだけど。
「イギリスさんのことを嫌いだったから、あんなふうに独立したわけじゃないんだね」
カナダの言葉にまさかとアメリカは首を振った。
アメリカの身体を解放したカナダが再び隣に腰掛けるのを確認してから
ゆっくりと口を開く。
「違うよ。・・・あれに関しては俺の感情は関係ない。俺の感情を挟むことなんて
 出来なかった」
「アメリカ・・・」
「もしもあのとき戦争を起こさず、キミみたいに緩やかに独立をしていたら
 俺はいらないって言われなかったんじゃないかって思わなくもないよ。
 けど、俺が「アメリカ」がそんなことを少しでも考えるのは、あのときに
 血を流した人たちに対してひどい侮辱になる。だから俺は決して後悔をしない。
 その結果、イギリスが俺のことを嫌いになって憎んだとしてもね」
宙に彷徨わせていた視線を床に向けたアメリカは普段の彼からは想像もできないほど
落ち着いた声で呟き目を伏せた。
イギリスにとって裏切りの象徴であるあの戦争のことを思うと胸が苦しくなる。
結果としてイギリスを裏切ったこともそうだけども、多くの国民が血を流し苦しんだ。
あのときの苦しみや嘆きを決してなかったことにはしない。
後悔もしない。