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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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「おい。そろそろ会議が始まるのに何を話し込んでいる!」
「―――――っ」
「ドイツさん」
「もうそんな時間?あーやだね。今日も長引きそうで」
ドイツの怒鳴り声に三人は三様の反応を返した。
アメリカは息をのみ込み、日本は戸惑いの声を上げ、フランスはドイツに乗じて
さっさと会議室に入り込む。
お前らもさっさと会議室に来いと言い残してドイツも会議室に入ってしまい
アメリカは日本と二人残されてしまった。
黙り込んだままの日本にごめんねと笑いかける。
「フランスはああ言ったけど、俺は止める気は無いよ」
「・・・アメリカさん。私は、今の貴方がとても好きですよ」
そっと腕に触れて告げられた言葉にアメリカは笑みを深くする。
優しい友人はアメリカのことを思って慣れない言葉を口にしてくれた。
その優しさに甘えたくなる。
けれど、駄目だ。
事実、イギリスは英領アメリカのような態度を取り始めてから
少しずつ優しくなってきている。
このまま彼の弟でいれば、昔のように笑ってくれるのかもしれない。
それにこの苦しみは罰だ。
イギリスに言ってはならないことを言った罰。彼を愛してしまった罰。
逃げてはいけない。これはアメリカが背負わなければならない痛みなのだから。
だから無邪気に笑って口を開く。
出来れば、この言葉が優しい友人を泣かせないようにと。
「ありがとう日本。でも、『俺』はいらないから」
「フランスさんも言っていました。イギリスさんは喜ばないと」
「・・・・・・ハッピーエンドには必要なことなんだよ」
「ですが!」
「良いんだ日本。それよりも早く行かないとドイツに怒られちゃうんだぞ」
言い募る日本に変わらず笑顔を向けてアメリカは閉ざされた扉を押し開く。
中は思っていたよりも静まっている。
メンバーのわりには静かだねと笑い、中に足を踏み入れる。
アメリカの登場に幾人かの視線が向けられたが全く気にしない様子で
指定された席に腰かけた。
物言いたげにアメリカを見つめていた日本だったが、一つ溜息をついて
アメリカの隣に腰掛ける。
今日の会議の席は比較的仲の良い者で固められており、アメリカと日本が隣同士に
なったのも二国が親密な関係にあるからだ。
イギリスの席はアメリカの真向かいに配置されていてその隣には当然のように
フランスが腰かけている。
そのまま二人を見ていると胸がズキズキ痛むので、アメリカは机の上に置かれていた
資料へと目を落とした。
今日の会議の議長国はドイツで彼らしい几帳面な文章が資料に綴られている。
添付されている写真入りのグラフもじつに的確な出来であり、これで厚みが無ければ
最高なのになとアメリカはぱらぱらめくりながら思った。
「―――――っざけんじゃねぇよ!」
「ふざけてないよ。ふざけてこんなこと言うもんか」
「ふざけてんだろ。んなことあいつが―――――」
真向かいに座っているイギリスとフランスは会議を始める前にして
早くも喧嘩を始めたらしい。
険を含んだ罵声がアメリカの耳にまで届く。
その声を気にせずに資料に集中しようとしたが駄目だった。
はあ、とため息をついて資料に向けていた視線を怒鳴りあいに発展しそうなほど
声を張り上げている二人に向ける。
フランスはまだ余裕がありそうだったが、イギリスは顔を真っ赤にして怒鳴っている。
手が出ていないのが不思議なくらいだ。
「―――――アメリカさん」
「ああ日本。すごいよね。昔からああなんだよ」
声に含まれている気遣いの色に全く気付かないふりをしてDDDと笑った。
数ヶ月前の会議では二人のやり取りを見て思わず怒鳴ってしまったけれど
今はそんな失態は犯さない。
胸は相変わらずズキズキと痛むし、もやもやとする気持ちも消えないが
それらを胸の中に押し込んでしょうがないなあと言葉を続ける。

「せっかくこっちに来ても、フランスと鉢合わせるとああいう風に喧嘩を始めて
 俺のことなんて放って置きっぱなしになるんだ。フランスとはいつでも会える癖にさ」
「・・・昔から変わらないのですね」
「ちいっとも変わらないんだぞ。あのおっさんたちは。困った俺が泣きだすまで
 ああなんだ」
「泣いたのですか?」
「ん、あ、うん。恥ずかしいけど、あのときの俺はイギリスだけじゃなくてフランスも
 それなりに好きだったから、好きな二人があんな剣幕で喧嘩していると寂しくてね」
「その気持ちはわかります。私も好きなお二人が喧嘩していると寂しくなりますから」
「それで俺が泣いてそのときは喧嘩を止めるんだけど、次に会った時にはそんなこと
 けろっと忘れて、また殴りあうんだ。ほら、あんなふうに」
「・・・あれは、止めた方がよろしいのでは?」

二人の視線の先でついにイギリスはフランスの胸倉を掴んだ。
凶悪な笑みを浮かべて今にも殴りかかりそうだ。
そのイギリスの凶悪な笑みにそれまで見守っていた周囲も止めに入らないのかと
ちらちらアメリカや日本に視線を送ってきている。
だがアメリカは止めに入らず、のんびりとイギリスを見つめていた。
アメリカさん?と日本が呼びかけても動こうとしない。
「大丈夫だよ。ほら」
ちょうどそのときそれまでアメリカと同じように黙って資料に目を通していたドイツが
無言のまま立ち上がり、睨みあっている二人に歩み寄った。
そして二人の頭を鷲掴みにして勢いよく引き離す。
「貴様らは静かに待つこともできんのか!!」
「いてっ!マジ痛いって!」
「何するんだよクラウツ!!」
「何するんだではない!静かに待てと言っているだけだ!!」
「ぎゃーマジお兄さんの頭が割れるー」
ドイツに思い切り頭を鷲掴みにされた二人は罵声やら悲鳴を上げてもがく。
だが数分もしないうちに抵抗は止み、解放された時には痛みで涙ぐんでいた。
「あれにこりて、少しはおとなしくなるといいんだけど」
「・・・ええ、そうですね」
少し間をおいたが頷いた日本にアメリカは満足そうに笑った。
痛む頭を摩っていた二人がぶつぶつ文句を言いながらも席に着き、主催国のドイツも
席に戻ったところで会議の開催の合図が出される。
アメリカは一度だけイギリスに視線を向けてから資料に目を落とした。
まだ時期は早いのかもしれないけれど、彼には謝っておきたい。
今日時間が取れると良いなと呟いて、ようやく意識を進行役であるドイツに向けた。