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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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「知っている。フランスにも言われたな。あんまりお前をガキ扱いするんじゃねぇって」
フランスの名前がイギリスの口唇から零れた瞬間、アメリカは激高した。
彼の口からフランスの名前を聞きたくなかった。
特に今は。
「今、キミと話しているのは俺なんだよ!!フランスの名前なんて出さないでくれよ!」
可愛い弟の皮なんてかなぐり捨てて怒鳴る。
荒くなった息を整えもしないで感情のままにイギリスを見据えた。
頬に手を触れさせたままの彼がグリーンアイを丸くして驚いたところで
ようやくアメリカは自分のしでかした事に気づく。
ハッと息を呑みこみ身を引こうとすると手首をがっちり掴んだイギリスが
思い切り引き寄せる。
その力強さに抵抗を忘れ引き寄せられるがままにその胸に抱きこまれた。
頬に寄せていた手は腰を掴んでおり、少々のことで外れそうにない。
それよりも百数十年ぶりの抱擁に頭が沸騰しそうだった。
紅茶に混じった薔薇の香りが嫌がおうにも気分を高揚させる。
止めろ、離せ。
言葉は喉の奥でぐるぐると蠢くだけで音にはならない。
「お前の言うとおりだ。俺が今話しているのはあいつじゃない。悪かった。
 許してくれ」
「なんでキミが謝るんだい?謝るのは俺だろ」
「なあアメリカ」
アメリカの言葉を遮ってイギリスは穏やかな声を上げた。
肩に顔を埋めているせいでその表情は見えない。
イギリスとの濃すぎる接触に全力疾走を続ける心臓を何とか宥めながら「なんだい?」と
何でもないように答える。

「俺は本当はわかっているんだ。あいつに言われなくともお前が弟扱いをされるのが
 嫌なことを知っている。けどな、嫌がられたって嫌われたって、お前は、アメリカは
 俺の大事な家族なんだよ。お前のことを嫌いだって言い聞かせようとしても
 駄目なんだ。好きなんだよ。愛しているんだよ。気持ち悪くて重たくても
 俺の気持ちは変わらない」

「イギ、リス・・・」

声が掠れた。
嬉しくて言葉にならない。
弟に対する愛であっても彼ははっきりと好きだと、愛していると言葉にしてくれた。
恥ずかしがりやで皮肉屋のイギリスが言葉にしてくれたのだ。
どれほどの僥倖であることか。
あまりの幸せにうっすらと視界が滲んだ。
肩に顔を埋めていたイギリスが顔を上げる。
特徴的な眉を僅かに下げて自信なさげにアメリカに尋ねた。
「お前はどうだ?俺のこと、本当はどう思っているんだ?」
「俺は・・・・・・」
胸がいっぱいになってしまい言葉が続かない。
けれど、変なところでネガティブなイギリスに誤解されないようにと
思うがままに言葉を紡ぐ。
「嫌いじゃない。嫌いじゃないよイギリス」
絞り出した言葉はひどくありきたりなものだった。
それでも嬉しそうにイギリスは笑う。
数か月ぶりの笑顔につられてアメリカも笑顔を浮かべる。
はにかむように柔らかく。小さなあの頃のように。
「俺、傍に居ても良いの?」
あの頃の、キミの可愛い弟じゃないんだぞ。
そう付け加えたがイギリスはあっさりと首を振った。
「別に構わねぇよ。むしろ、居てくれないと困る」
はっきりと言い切ってイギリスは改めてアメリカを抱きしめた。
恋人を抱きしめる抱擁ではなく、親が子供を抱きしめる抱擁であったが
久しぶりのイギリスの温もりにアメリカの心は満たされた。

(もう、俺はこの温もりを離せない)

イギリスの大好きな英領アメリカに戻ろう。そしたらイギリスはもう一度愛してくれる。
うっとりとした表情で笑うアメリカにもはや躊躇いは存在しなかった。

□ ■ □ ■

「イギリス」
あの頃のように甘えた口調で名を呼ぶ。
アメリカのさらさらの髪を梳いていたイギリスは手を止めてアメリカに笑いかけた。
もっとギュッとして。
舌足らずなお願いにイギリスは抱きしめる腕に力を込める。
「なんだよアメリカ。甘えんぼうさんだな」
「うん。キミに抱きしめてもらえると安心するんだ」
イギリスの胸にすりっと頬を寄せ、アメリカはうっとりと微笑む。
午後の柔らかい日差しが差し込むベッドの中でイギリスに抱きしめられながら
アメリカは寝転んでいた。
暖かい日差しと優しいイギリスの仕草に瞼はくっつきそうになる。
眠気を振り払おうと瞼を擦ると「こら、赤くなるぞ」とやんわりとイギリスに
止められた。
だって眠りたくないのに。
ぷくりと頬を膨らませると仕方ないなと軟く笑われた。
優しく笑うイギリスを見ているとお腹がすいていることに気づいた。
お昼ご飯を食べてまた1時間しか経っていないのだが、すいてしまったものは
しょうがない。
胸元のシャツの生地をくいと引っ張ってアメリカはイギリスに強請った。
「ねえイギリス。後でスコーン作ってくれよ。キミの作ったスコーンが食べたいんだ」
「ならアフタヌーンティーのときに作ってやるよ。それまで待てるな?」
待てるか自信は無いけれど、こくりと頷く。
どうしてもお腹がすいてしまったら強請ればいい。
きっとイギリスは仕方ないという顔をして作ってくれるに違いない。
「うん。たくさん作ってくれよ」
「作ってやっても良いけど、食べ過ぎるなよ」
茶化すイギリスの言葉にも腹は立たない。
何故なら彼は純粋にアメリカのことを心配して言ってくれているのだから。
怒る必要なんてどこにもない。
約束を交わした後、再開された仕草に眠気がまた忍び寄ってくる。
だがアメリカは今度は逆らうことなくゆっくりと瞼を閉じた。
悪い夢を見る心配などない。
だって傍にイギリスが居るのだから。

とても幸せだった。
両想いになりたいわけではなかったし『弟』として甘えれば抱きしめてもらうことだって
一緒に寝てもらうことだってできる。
十分過ぎるほどの幸せだ。
それに最近は昔のようなはにかんだ愛おしさ全開の笑顔を向けてくれる。
何も不満は無い。

大丈夫だ。恐れることは何も無い。
イギリスはアメリカが欲望を伴った愛を抱いているなんてことに気づかない。
このままずっとイギリスを愛し続けることが出来ればアメリカは幸せなのだ。

(ねえカナダ。やっぱりヒーローにはハッピーエンドしか訪れなかったぞ)

イギリスに包まれ、幸せそうに眠るアメリカはまるであの頃のように
幼い寝顔を晒している。
それは胸が痛くなるほど切なく、愛情に満ちた光景だった。


to be continued Arthur side